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受胎告知
昨日、めぐみ幼稚園のクリスマスページェントが行われました。子どもたちは先月からイエス様の降誕劇の練習を続けてきました。たくさんの歌も覚えて、それぞれの役割を演じてくれました。マリアとヨセフ、ガブリエルと天使たち、宿屋、羊飼いと羊、博士と星……そのどれもがイエス様の誕生に関わった人たち・ものたちでした。
初めに登場するのはマリア。イエス様の母となった女性です。女性といっても、まだ10代の少女であったようです。そのマリアは天使ガブリエルのお告げに対して「お言葉どおり、この身になりますように」（ルカによる福音書1章38節）と語ることができる人でした。「私の思ったとおりになるように」とか「私の願い通りにしてください」というのではなくて、「神さまの言葉どおりに、私の身に起こることがなりますように」と言うことができた。その言葉が語られるところに、救い主がお生まれになったのです。
ある日、マリアのところに天使ガブリエルが来て、このように告げました。
「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。」（ルカによる福音書1章28節）
突然のことにマリアが驚き、戸惑っているとガブリエルはさらに続けて言いました。
「マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。その子は偉大な人となり、いと高き方の子と言われる。」（ルカによる福音書1章30～32節）
ガブリエルが告げた神様のご計画は、マリアにとって全くの想定外のことでした。ほんの少しも望んでいなかったこと、それどころかそれはマリアにとってとても都合の悪いことでした。なぜなら、マリアは婚約中の身だったからです。ガブリエルのお告げは、マリアが婚約相手のヨセフの子ではない子どもを産む、ということを意味していました。
どのような理由であるにせよ、婚約相手とは違う人の子を身ごもることは、現在でも大きな問題となります。当時のユダヤ社会では、それは非常に重い罪とされていたため、最悪の場合、マリアが処刑されることもあり得ました。ヨセフはそうなることを望まなかったようですが、それでも彼はマリアと離縁しようとしていました。
母と子だけで生きていく、というのは、今も大変です。それに加えて、離縁の理由がマリアの不貞のせいだとみなされてしまいます。誰もが顔見知りという小さな村の中では、厳しい視線を向け続けられることになっていたでしょう。マリアも、彼女が生むことになるイエス様も、生命の危機です。
「どうしてそんなことがありましょうか。わたしは男の人を知りませんのに。」（ルカによる福音書１章34節）
マリアのこの言葉には、男性との関係を持ったことがないのに、どのようにして子どもを身ごもることがあり得るのか、という問いがあります。しかし彼女の疑問はそれだけではないのかもしれません。生まれる子は救い主になるというけれど、本当に無事に生まれ、成長していくことができるのか。誰がこの子と私を守るのか。マリアにはわかりませんでした。
神に身を委ねたマリア
マリアの疑問に対するガブリエルの答えははっきりしていました。
「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる。……神にできないことは何一つない。」（ルカによる福音書１章35～37節）
それはマリアが一人で実現させることではありません。神様の力によって包まれることによって実現することなのです。神様はマリアに聖霊を送り、マリアと共にいて、マリアを守り、力を与えてくださる。マリアを支え、マリアと共に生き、マリアに託された使命を共に担う人を与える。危機から逃れるための道も用意してくださる。だから、マリアは神様に与えられた赤ん坊を産むことができ、その子は成長して救い主となることができるのです。
この後、マリアの妊娠を知ったヨセフは悩んだ末に、マリアと離縁しようと決心しました。けれども天使が夢の中でヨセフに現れ、ヨセフがマリアと結婚することを決意できるように導きました。マリアの初めての出産は、故郷を遠く離れたベツレヘムで行われました。見知らぬ土地でしたが、出産のための場所が与えられ、マリアは無事に産まれた子どもを飼い葉おけに寝かせることができました。その後も色々な試練や困難があったことでしょう。けれども神様の力はマリアから離れることはありませんでした。
マリアはこれから自分の人生に起こることを全て教えられたわけではありません。具体的なことは何一つわからないまま、「神にできないことは何一つない」という天使の言葉を信じて、自分の生涯を神様の御手に委ねたのです。
「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身になりますように。」（ルカによる福音書1章38節）
はしためであるということは、主人である神様のおっしゃることを受け入れ、従うということです。私の思いよりも、神様の想いが実現することが大事だと考えることです。そしてそれは、神様にはできないことはなくて、自分にはわからないことも確かに行われるんだと信頼するということです。マリアには、そのように自分の身を神様に委ね、自分の思いよりも神様の想いの実現を願うことができたのです。
私の思い通りではうまくいかない
天使のお告げに対するマリアの応答は当たり前のものではありません。むしろ人間は、「神様のお言葉通り」ではなく、「私の思い通りになるように」と願います。自分で考え、決断していく理性は人間にとって必要です。けれども、神様ではなく、自分を自分の主人として、「私の思い通りになるように」という願いばかりになると、うまくいきません。
最初の人間として聖書に描かれているアダムとエバもそうでした。「神のようになることができる」という蛇の誘惑にそそのかされてしまった二人は、エデンの園を追いやられてしまいました。エデンの園は、人間にとって最高の場所でしたが、そこに住み続けるためには、神様が主人であることを受け入れなければなりませんでした。
現在の社会では、特に「先進国」と呼ばれる国々では、「神様が主人」などと本気で考えている人はごくわずかになってしまったのかもしれません。少なくともそれらの社会、国家、あるいは企業なども、人間の思いが実現することを目指しているように思えます。
それでうまく行っていたなら問題はないのです。けれども、人間が主人になった世界は、どうもうまく行きそうにはありません。戦争の愚かさは歴史から既に何度も学んでいるはずなのに、未だにその過ちを繰り返しています。戦争の種をあちらこちらに巻き続けている国もあれば、戦争を始めながら泥沼にはまり、終わりが見えなくなっている国もあります。
個人レベルでも、自分の思い通りにしようとしても、うまくいかないことがあります。それが良かれと思った場合でも、それをしなければならないと信じていた場合でも、思い通りにいかなかったり、思い通りにいったのに良い結果にならなかったりすることがある。私たち人間は、自分の思い通りになるように努力するだけでは、うまく生きられないのかもしれません。
お言葉どおりに
人間は、「私の思い通りに」と願うだけではうまく生きられない。だからといって、何も考えないとか、何も望まないというわけではないのです。願い事は何でも神様に打ち明けていい。必要なものがあるのは当たり前。でも、誰を主人とするか、ということは忘れてはならないのです。
マリアはその大切なことを見失いませんでした。思いもよらぬお告げを聞き、その先にある様々な困難も想像しながらも、神様が守ってくださるという約束を信じました。神様が私の主人であり、私のことも、この世界のことも全て知って、必要なこと、大切なことを知っておられて、神の国に向けて私たちを導いてくださる。その信頼から、「お言葉どおり、この身になりますように」と言うことができました。
同じように、神様にその身を委ねた人がいました。それはマリアから生まれたイエス様です。十字架に向かうその直前に、イエス様はこう祈られました。
「父よ、御心なら、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの願いではなく、御心のままに行ってください。」（ルカによる福音書22章42節）
このような祈りがなされたところに、神様の御業が起こりました。約束されていた救いの出来事が実現したのです。「お言葉どおりに」とマリアが祈ったことで、救い主はこの世に誕生し、神様がいつも私たちと共にいて、新しい生命を与えてくださいました。
「御心のままに」とイエス様が祈ったことで、私たちの罪は全てその十字架に負われ、どのようなことがあっても、たとえ私たちが神様を捨てたとしても、神様は私たちを見捨てず、愛し続けてくださること、この世のどのような苦難をも共に担ってくださることを明らかにされました。
神様の思いは私たちの思いを超えており、私たちの願いとは異なります。時には試練の道を示されることもあります。それでも、神様の思いはいつも、私たちみんなにとって大切であり、必要なことを実現しようとしておられます。
クリスマスの備えをするアドベントの今、私たちもマリアのように神様を信じ、神様を私の主人としてその言葉に従う思いを新たにしたいと思います。いつ、どんなときに、神様の言葉が聞こえてきても、「お言葉どおりに」と答えることができるように、神様の言葉を求め続けたいと思います。
牧師 杉山望
December, 11, 2022, Sunday Worship Service（Advent Week 3）
"May Your Word to Me be Fulfilled"
Luke 1:26-38
Annunciation
Yesterday, the Megumi Kindergarten Christmas Pageant was held. The children have been practicing the nativity play of Jesus since last month. They learned many songs and played their roles. Mary and Joseph, Gabriel and the angels, the innkeeper, the shepherd and the sheep, the doctor and the star ... were all people and things involved in Jesus' birth.
The first one to appear is Mary. She was the woman who became the mother of Jesus. She was a woman, but she seems to have been only a teenage girl. Mary was the one who could say to the angel Gabriel, "May your word to me be fulfilled" (Luke 1:38). Instead of saying, "Let it be as I thought it would be," or "Do as I wish," she could say, "Let it happen to me according to your word, God." Where those words were spoken, the Savior was born.
One day, the angel Gabriel came to Mary and told her this:
Greetings, you who are highly favored! The Lord is with you. (Luke 1:28)
When Mary was surprised and perplexed at this sudden announcement, Gabriel continued, "Do not be afraid, Mary; you have found favor with God. You will conceive and give birth to a son, and you are to call him Jesus. He will be great and will be called the Son of the Most High." (Luke 1:30-32)
God's plan as announced by Gabriel was completely unexpected for Mary. It was something she did not want in the slightest; on the contrary, it was very unfavorable for her. She was engaged to be married. Gabriel's prophecy meant that Mary would give birth to a child who would not be the son of her fiancé, Joseph.
For whatever reason, carrying a child by someone other than the person to whom you are engaged is a big problem even today. In Jewish society at that time, it was considered a very serious crime, and in the worst case, Mary could have been executed. Joseph apparently did not want that to happen, but he still wanted to separate from Mary.
It is still very difficult for a mother and her child to survive on their own. On top of that, the reason for the separation would be deemed to be because of Mary's infidelity. In a small village where everyone knew each other, they would have been subjected to constant stern scrutiny. Both Mary and the man she would give birth to, Jesus, would be in mortal danger.
“How will this be since I am a virgin?” (Luke 1:34)
Mary's question in these words is how it is possible for her to be pregnant with a child when she has never had relations with a man. But perhaps her question is not the only one. She did not know if he would really be born and grow up safely though the angel said that the child to be born would be a savior and who would protect this child and me?
Mary surrenders herself to God.
Gabriel's answer to Mary's question was clear.
“The Holy Spirit will come on you, and the power of the Most High will overshadow you. So the holy one to be born will be called the Son of God. …For no word from God will ever fail.” (Luke 1:35-37)
It is not something that Mary alone can make happen. It is something that is realized by being enveloped by God's power. God sends the Holy Spirit to Mary, to be with her, to protect her, and to give her strength. He supports Mary, lives with her, and gives her people who will share in the mission entrusted to her. He also prepares a way for us to escape from danger. So Mary can give birth to the baby God has given her, and that child can grow up and become the Savior.
After this, when Joseph learned of Mary's pregnancy, he was troubled and decided to leave her. However, an angel appeared to Joseph in a dream and guided him so that he could decide to marry Mary. Mary's first birth took place in Bethlehem, far from her hometown. Although it was a strange land, a place was given to her to give birth, and she was able to safely lay her newborn in a manger. There must have been many trials and difficulties after that. But God's power never left Mary.
Mary was not told everything that was going to happen in her life. She did not know anything specific, but she trusted the angel's words, "There is nothing that God cannot do," and she entrusted her life into God's hands.
“I am the Lord’s servant. May your word to me be fulfilled.” (Luke 1:38)
To be a servant means to accept and obey what God, the Master, says. It means to think that the fulfillment of God's will is more important than my own. It means trusting that there is nothing that God cannot do, and that He can certainly do what I do not understand. Mary was able to surrender herself to God in such a way and hope for the fulfillment of God's thoughts rather than her own.
Things don't work out the way I want them to.
Mary's response to the angel's announcement is not taken for granted. Rather, human beings do not wish to be "according to God’s word," but rather "as I wish. Reason is necessary for human beings to think and make decisions on their own. However, if we only ask God to "do as I wish," making ourselves, not God, our master, we will not succeed.
This was the case with Adam and Eve, the first human beings depicted in the Bible. They were driven out of the Garden of Eden by the temptation of the serpent who said, "You can be like God.” The Garden of Eden was the best place for human beings, but in order to continue to live there, they had to accept God as their master.
In today's society, especially in the "developed" countries, very few people may seriously believe that God is the master. At least those societies, nations, or even corporations seem to be aiming to realize the thoughts of human beings.
If it were working, there would be no problem. But a world in which humans are the masters does not seem to be going well. We have already learned the folly of war many times from history, and yet we are still repeating the same mistakes. Some countries continue to sow the seeds of war here and there, while others start wars and get stuck in a quagmire with no end in sight.
Even on a personal level, there are times when trying to do what you want doesn't work. Even when it is for the best, even when we believe we have to do it, sometimes it doesn't work out the way we want it to, or it doesn't turn out well when it does. We humans may not live well if we only try to do what we want.
According to your word
We humans cannot live well just by wishing for things to go our way. That doesn't mean that we don't think or wish for anything. We can confide in God whatever we wish for. It is natural to have what we need. But we must not forget who is our master.
Mary did not lose sight of that important thing. She heard an unexpected revelation, and while imagining the various difficulties that lay ahead, she believed in God's promise to protect her. God is my master, He knows everything about me and this world, He knows what is necessary and important, and He will guide us toward the Kingdom of God. Because of that trust, I was able to say, " May your word to me be fulfilled.”
In the same way, there was one who surrendered himself to God. It was Jesus, born of Mary. Just before he went to the cross, he prayed, "Father, if thy will be done, let it be done.
“Father, if you are willing, take this cup from me; yet not my will, but yours be done.” (Luke 22:42)
Where such a prayer was made, God's work took place. The promised salvation event came true. Through Mary's prayer, "according to your word," the Savior was born into the world, and God is always with us, giving us new life.
Jesus' prayer, "according to His will," revealed that all our sins were borne on that cross, that no matter what happens, even if we abandon Him, He will never abandon us, that He continues to love us, and that He will bear with us whatever hardships we may face in this life.
God's thoughts are beyond our thoughts and different from our wishes. Sometimes He shows us the path of trials. Nevertheless, God's thoughts are always trying to accomplish what is important and necessary for all of us.
In this Advent season of preparing for Christmas, we, like Mary, want to renew our faith in God and our desire to obey His word as our master. We want to continue to seek God's word so that whenever and however we hear it, we can respond, "According to your word.”
Pastor: Nozomu Sugiyama
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