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アロペアレンティング(代理養育)

Alexander StrachanによるPixabayからの画像

 

 

最近、現代の西洋社会の常識が、必ずしも人間にとって当たり前のことではないことに気づかされてきました。様々な面で行き詰まってしまった西洋社会とは違う社会を知りたくて――それは聖書の時代の様子を知る事にもなるので――『昨日までの世界』(ジャレド・ダイアモンド著)という本を買いました。その中で、子育ての役割分担のことも書かれています。

 

現代の西洋社会では、両親が子どもの養育の中心的な存在になりますが、伝統的社会では、他の大人と育児を分担したり、子ども同士のあいだで年長者が年下の子どもの面倒を見たりしています。両親以外の人が子どもの世話をする養育スタイルは「アロペアレンティング(代理養育)」と呼ばれます。現代でも、近所に住んでいる祖父母が養育を手伝うことがあり、幼稚園教諭や保育士も養育を担っていますが、伝統的社会では他の養育者が両親以上に子育ての中心的な存在となる場合も珍しくありませんでした。たとえば、ブラジルのアマゾン奥地のピダハン族の子どもたちは集落のなかを自由に動き回ります。誰もが子どもたちと関係をもち、集落全体で子育ての責任を担っているのです。また、ペルーのアマゾン地域の先住民ヨラ族の子どもたちは、食事をする回数の半分は自分の家族以外と一緒に食事をしています。

 

アロペアレンティングは、ここ数十年、減少傾向にあり、親以外の人が子育てに関与したり、子育ての責任を社会で分担したりすることが少なくなってきました。親以外の存在が子どもに関わることは、食物や保護を提供することで、子どもの生存率を高めるという意義がありました。それと共に、人生に必要なことをいろいろと教え、とるべき行動の手本となりました。後者のような意義は、これからも必要とされるでしょう。私も教会でいろんな人に関わっていただき、育てられてきました。子どもの養育を両親だけが担うのではなく、幼稚園や学校だけでもなく、教会も一緒に担っていきたいと思います。

 

牧師 杉山望