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自然と信仰

meguraw645によるPixabayからの画像

 

“カント オワ ヤク サ ノ アランケ シネ カ イサ” これは「天から役目なしに降ろされた物はひとつもない」という意味のアイヌ語です。アイヌ民族で初めて国会議員を務めた萱野茂さんが愛用していた、アイヌの世界観を表す言葉でもあります。アイヌは、すべてのものに魂がある、という世界観をもっています。アイヌの社会を物語の中心に組み込んだ漫画「ゴールデンカムイ」の中では、主人公の一人であるアイヌの少女が次のように語っています。

 

「私たちは身の回りの役立つもの、力の及ばないもの、すべてをカムイ(神)として敬い、感謝の儀礼を通して、良い関係を保ってきた。火や水や大地、樹木や動物や自然現象、服や食器などの道具にもすべてカムイがいて、神の国からアイヌの世界に役に立つため送られてきていると考えられ、粗末に扱ったり、役目を終えたあとの祈りを怠れば、災いをもたらすとされてきた。」(「ゴールデンカムイ」2巻)

 

アイヌのような先住民族の文化には、自然との関係を保つための知恵が込められています。それは、自然を単なる物質として捉え、人間の欲望を満たすために濫用してしまう現代社会が失ってしまった知恵だったのかもしれません。

 

昨日、天城山荘感謝礼拝が行われました。1954年に開設され、68年間で延べ174万人が利用してきた宿泊と研修を兼ね備えた日本バプテスト連盟の重要な施設でした。礼拝の中で、「天城山荘は都会の喧騒を離れて、自然の中で主の言葉を聞くことができる場所だった」と振り返られていました。単に静かな場所であったというだけでなく、自然の中にあったということが、信仰にも大きな影響を与えていたのかもしれません。アイヌの世界観とは異なりますが、聖書にも自然との関わり方が語られてきました。自然は人間が利用するだけの単なる物質なのではなくて、私たちが生きるために必要であり、私たちに大切なことを教え・気づかせる存在でした。なかなか持てませんが、自然と関わる時間も大切にしたいと思います。

 

牧師 杉山望