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あしあと

Ulrike MaiによるPixabayからの画像

 

「ある夜、わたしは夢を見た。

 わたしは、主とともに、なぎさを歩いていた。

 暗い夜空に、これまでのわたしの人生が映し出された。

 どの光景にも、砂の上にふたりのあしあとが残されていた。

 ひとつはわたしのあしあと、もう一つは主のあしあとであった。

 

 これまでの人生の最後の光景が映し出されたとき、

 わたしは、砂の上のあしあとに目を留めた。

 そこには一つのあしあとしかなかった。

 わたしの人生でいちばんつらく、悲しい時だった。

 

 このことがいつもわたしの心を乱していたので、

 わたしはその悩みについて主にお尋ねした。

 「主よ。わたしがあなたに従うと決心したとき、

 あなたは、すべての道において、わたしとともに歩み、

 わたしと語り合ってくださると約束されました。

 それなのに、わたしの人生のいちばんつらい時、

 ひとりのあしあとしかなかったのです。

 いちばんあなたを必要としたときに、

 あなたが、なぜ、わたしを捨てられたのか、

 わたしにはわかりません。」

 

 主は、ささやかれた。

 「わたしの大切な子よ。

 わたしは、あなたを愛している。

 あなたを決して捨てたりはしない。

 ましてや、苦しみや試みの時に。

 あしあとがひとつだったとき、

 わたしはあなたを背負って歩いていた。」

translation copyright(C)1996 by Pacific Broadcasting Association

 

マーガレット・F・パワーズさんが、この「あしあと」という詩を書くきっかけとなったのは、夫であるポールさんの言葉でした。結婚を前に二人の将来に不安を抱く彼女に、ポールさんは、「二人は一つになって人生を歩いて行ける」、二人で処理できないような困難がやってきたら、「その時こそ主が僕たち二人を背負い、抱いてくださる時だ」と言って、励ましたそうです。父親から虐待され、全科を持つポールさんは、大切な人との出会いを通して、神様が自分のことを、自分の罪も含めて背負ってくださることを知り、神様への信頼を持ち続けたのでした。

 

 書籍「あしあと -footprints-」(PBA/太平洋放送協会)

牧師 杉山望