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競争よりも協力が人間らしい

Sasin TipchaiによるPixabayからの画像

 

生物は、下等な生物から次第に高等な生物に変化してきたという説を進化論といいます。進化論というと、チャールズ・ダーウィンしか思い浮かびませんが、生物が進化するという考えはダーウィン以前からもあったそうです。イギリスの社会学者ハーバート・スペンサーもダーウィンの『種の起源』が出版される前から進化論を主張していました。スペンサーは、生物だけでなく宇宙や社会などすべてのものが進化していくと考えていました。「進化」のことを英語で“evolution”と言いますが、これはスペンサーが広めた言葉だそうです。このような進化の考えの根底には、「生物の中でヒトが最上位」という考えがありました。そしてそれは、人間社会における階級制や身分制、格差や差別を正当化するものとしても利用されてきたのでしょう。

 

一方のダーウィンは、進化を意味する言葉として「世代を超えて伝わる変化」(descent with modification)をよく使っていたようです。生物の世代を超えた変化は、単調な進歩や発展ではない、と考えていたのかもしれません。また、ダーウィンは哺乳類共通のルールは“黄金律”である、と述べています。つまり、「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」ということです(マタイによる福音書7章12節)。その中でも人間は、鋭い牙もなければスピードも劣っているけれども、助け合い、他人の面倒を見る能力が優れている。「共感こそが人間の一番強い本能だ」、とダーウィンは述べています。

 

協力よりも競争の方が価値があると主張される場面もあります。けれども、競争ばかりで生きられる生物は、人間も含めて存在しないのではないでしょうか。だからこそ神は協力し、助け合うことを私たち人間に求めてこられたのでしょう。私たちは本質的に共に生きる存在として創られているのです。

 

牧師 杉山望