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敵の目から見える世界

Steve BuissinneによるPixabayからの画像

 

 

ルワンダで平和構築のための働きを続けている佐々木和之さんは、支援する会の会報“ウブムエ”で、ウクライナ危機についてこのように指摘しています。

 

「アフリカの人々と話していると、『ロシアだけが悪者にされているが、本当にそれだけか?』という眼差しがあることに気づきます。この戦争の背後に、西側の利害があるのではないか?これまで植民地支配に始まり、欧米の横暴と偽善を目の当たりにしてきたアフリカの人々(おそらく中東の人々も同様でしょう)は、今回の出来事を、善対悪の対決と単純化するのではなく、冷静に見ているようです。もちろん、軍事侵攻によりウクライナを破壊し、難民危機を引き起こし、多数の民間人犠牲者を出しているロシアの行動が糾弾されるべきであることは論を待ちません。しかし、今回の危機の背景には、1)ソビエト崩壊以降のNATOの一貫した東方拡大、2)2014年、ウクライナの新ロシア派から新米派への体制転換に果たしたアメリカの役割、3)それ以降、東部で続いているウクライナ政府側とロシア系武装勢力との内戦、4)2021年から始まったアメリカによるウクライナの武装化と軍事訓練(NATOへの実質的な編入)、そして、5)軍産複合体という武器輸出のために軍事的緊張を煽る勢力があるのです。これを踏まえず、プーチン氏のみを悪魔化し、経済制裁と軍事的対応に頼ることによっては、紛争解決の糸口を見いだすことはできないのです。」

 

今回のウクライナ危機に乗じて、軍備増強や憲法改正の必要性を考える人も増えているようです。一方の側からしか世界を見なければ、それが正しいことのように思えます。しかし、平和を作り出すためには、敵対する立場から世界を見ることも欠かすことはできません。「敵を愛しなさい」というイエスの教えを思い起こします。

 

牧師 杉山望