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受難週~ルワンダのジェノサイド追悼週間を覚えて~

PortraitorによるPixabayからの画像 

 

今週は「受難週」です。イースター前の一週間、教会はイエスが人々から見捨てられ、苦しみを受け、十字架につけられて殺され、墓に葬られる出来事に思いを向けて過ごします。今年はその期間がルワンダの「ジェノサイド・メモリアル・ウィーク」と重なりました。それは4月7日から始まる一週間で、1994年の同日に始まり、100日間で80万人が犠牲になったと言われているジェノサイドを覚える期間です。

 

その当時、ルワンダに駐在していたPKOの司令官ロメオ・ダレールは、『なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか』という手記を書きました。ルワンダの民族対立は、少数派のツチ族を支配者層、多数派のフツ族を農民とした封建的関係を築き上げ、プランテーション経営から莫大な利益を上げていたベルギーによる植民地政策によって引き起こされました。1962年にフツ族の蜂起によって独立が勝ち取られた後はフツ族が政権を握り、ツチ族に対する虐殺が繰り返されました。そのため、多くのツチ族が隣国で難民となり、その中で作られた「ルワンダ愛国戦線(RPF)」がフランスの支援を受けて力を増し、ルワンダ政府軍をも凌駕するようになりました。緊張感は高まり続けたためにPKOが派遣されましたが、国連と西側諸国は関与に消極的で、不十分な人員、装備しか送りませんでした。ジェノサイドのニュースがリアルタイムで世界に発信されても、世界はそれを無視し、ルワンダを見捨てました。

 

ウクライナへの西側諸国の支援や報道、避難民の受け入れは、中東やアフリカ諸国で危機に瀕した人びとへの対応とは明らかに異なります。「文明化」された社会が人種差別に取りつかれていることが改めて露わにされました。大国に支配された地に生まれ、白くない肌であったであろうイエスが負っている苦しみは西側諸国のものだけでないこと、世界に忘れられた人の苦しみも負っていることを覚えます。

 

牧師 杉山望