PHANUPONG CHUATAEWによるPixabayからの画像
この世界には闇が生じます。神は、全ての被造物がますます増え、ますます繁栄することを目的として創られました。その世界に闇が生じるのは、神の祝福を災いと見て、それに対抗する「死の力」が働くからです。神はご自身の目的のために死の力に対抗します。そして抑圧された人々を救い出し、奪われた人間性を取り戻させるのです。
クーデターから一年
昨年の２月１日にミャンマーでクーデターが起きてから１年が過ぎました。ミャンマーの国軍はアウンサンスーチー氏が率いる政権から実権を奪おうとしました。けれども多くの国民がクーデターを受け入れず、市民的不服従運動（ＣＤＭ）が呼びかけられ、ミャンマー全土に抗議デモが広がりました。医療関係者や教員、公務員、銀行員などが、クーデターに反対して労働を拒否したり、たくさんの人が町の通りに押し寄せてデモを行ったりしました。
しかし国軍は強硬な姿勢を取り続け、２月下旬からは市民に対する弾圧を強めていきました。市民は道路にバリケードを作り、軍の進入を食い止めようとしましたが、軍は実弾を用いて市民を弾圧し、多くの死者を出しました。
これまでに少なくとも1500人が国軍によって殺害され、40万人以上が国内での避難民となり、3万人以上が隣国へ逃げ込んだと見られています。避難といっても、安全な避難所が確保されているわけではなく、国軍に見つからないようにジャングルに身を隠している人々も少なくありません。人道援助を必要とする人は1440万人に上るとも言われていますが、支援を届けることも満足に行うことができません。
武力を用いて弾圧する国軍と闘うために、「国民防衛隊（PDF）」が作られました。志願兵となって軍事訓練を受ける若者もいます。国軍は抵抗する人々を「テロリスト」と呼び、国内各地での空爆や住宅の破壊・焼き討ちを繰り返しています。
ミャンマー国軍のもととなった「ビルマ独立義勇軍」は、戦時中に日本軍の支援によって作られました。ミャンマーの独立の際には、義勇軍が大きく貢献したため、独立後も軍の影響力が強く残りました。また日本は戦後も軍事政権への大規模な支援を行ってきました。ミャンマーを覆う闇は、日本の闇ともつながっています。今も生じている闇に目を向けながら、神の言葉を聞きましょう。
神の創造の目的
出エジプト記は、創世記からの連続性をもった物語です。創世記の中で、神はイスラエルの父祖アブラハムと重要な契約を結びました。繰り返し語られたその約束の言葉は、例えば創世記１７章では、このように言われています。
「わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。……これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。……わたしは、あなたをますます繁栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。」（創世記17章2,4,6節）
神の約束は、アブラハムの子孫がますます増え、ますます繁栄することでした。そしてそれは、神がこの世界を創られた目的をも指し示しています。つまり、神は被造物が増え広がり、繁栄することを目的として、この世界を創られたのです。
神はアブラハムを選び、彼の子孫が増え、繁栄することを約束しました。ただそれは、イスラエルだけを祝福しようとするものではありません。アブラハムを「諸国民の父とする」と言われたように、神はアブラハムやイスラエルに与えた祝福が、諸国民にも広がっていくことを目的としていたのです。神の創造の目的は常に全被造物が祝福されること、全ての人が祝福されることなのです。
祝福の約束が語られた創世記に続く出エジプト記では、まさにその約束が成就し始めたことが告げられます。
「イスラエルの人々は子を産み、おびただしく数を増し、ますます強くなって国中に溢れた。」（出エジプト記1章7節）
エジプトへ移り住んだときは70人でしたが、イスラエルの人々はエジプトで数を増していきました。「多くの子を産んだ、おびただしくなった、多くなった、強くなった、国中に溢れた」、というように、数が増していく表現を重ねて語りながら、あの約束がここで実現しているのだ、というメッセージを伝えています。
ますます増え、ますます繁栄する、という祝福は、現代では必ずしも人口増加や経済成長とイコールではないかもしれません。むしろ、貧困や抑圧に苦しんでいた人々がそこから解放され、命が守られ、安息を得られるようになっていくなら、そこに神の祝福を見出すことはできるでしょう。神の創造の目的は、今も変わっていません。
神の祝福に対抗する死の力
エジプトの地で、イスラエルを通して神の祝福が広がろうとしていました。しかし、エジプトの新しい王ファラオの目には、それが祝福のしるしではなく、災いのしるしに見えました。ファラオはイスラエルの人々がますます増え、ますます繁栄することを妨害しようとしたのです。
「イスラエル人という民は、今や、我々にとってあまりに数多く、強力になりすぎた。抜かりなく取り扱い、これ以上の増加を食い止めよう。」（出エジプト記1章9~10節）
この出来事を通して聖書が語ろうとしていることは、民族対立や政治対立ではありません。聖書はこれを神の目的とファラオの目的の対立として提示しています。ファラオの目的が達成されるならば、成就し始めた神の目的は頓挫してしまいます。そのような意味で、ファラオは命の神に対抗する死の力のシンボルとなっています。
ブラジルの教育者であったパウロ・フレイレは、彼の著書『被抑圧者の教育』の中で、「抑圧者の意識には、他者や民衆の人間化というものが豊かな人間性の追求ではなく、秩序の破壊としてしか映らない」、と述べています。ファラオもそのような意識となっていたのでしょう。彼はイスラエルの民が豊かになることを神の祝福とは思えず、むしろそれを恐れたのです。
ファラオはイスラエルの人々を抑圧し、重労働を課しました。それによってイスラエルの人々を弱らせ、数を減らそうと考えたのです。しかしそれは良い知恵ではありませんでした。抑圧されればされるほど、むしろイスラエルは増え広がったのです。神の意志は死の力に捕らわれた人間の抑圧にも屈せずに、なお祝福を与えようとするものであることが示されています。
神の祝福は、時にこのような逆境をくぐり抜けながら与えられました。死の力に捕らわれ、神の祝福を妨害しようとする人々、それを奪おうとする人々は、いつの時代にも存在しました。けれども神は、死の力の抵抗にも負けず、約束を成就しようとし続けるのです。
自ら立ち上がり、人々を立ち上がらせる神
死の力に捕らわれたファラオたちは、ますます命の神への抵抗を強めました。ファラオたちは、イスラエルの人々の豊かな人間性を失わせようとしました。しかし同時に、彼らは自分たち自身をも非人間化してしまいます。命の神に抵抗することで、彼ら自身もまた、神の祝福を失い、命の神から遠ざかっていくからです。
フレイレは、このように語っています。
「非人間化は、人間性を奪われてきた人びとだけの特徴ではなく（異なった形態ではあるが）それを奪いとってきた人びとにもみられる特徴であり、より豊かな人間になるという使命の歪みである。この歪みは歴史の内側で生起する。しかし、それは歴史的使命ではない。」（『被抑圧者の教育』）
神の目的は、全被造物が――すべての人が――祝福されることでした。今、神に抵抗し、人々を抑圧するファラオたちも、その祝福の対象に入っていたのです。けれども彼らはそのことを知りませんでした。ファラオたちの目的は、神の目的とは真っ向から対立するものでした。人々から人間性を奪い取り、祝福を奪うことは、人間性の歪みから生じているのです。
出エジプト記は、人々を祝福するという神の約束が成就し始めた時、それに抵抗し、妨害し、人々を非人間化させ、抑圧する死の力が現れたことを告げます。そして神はその死の力を放置せず、対抗する方であることを明らかにしていきます。死の力は神の目的を妨害し、創造の意味を無に帰そうとするからです。それと共に、神は抑圧され続け、非人間化されたイスラエルの民を立ち上がらせます。
出エジプト記において鍵となる中心的な問題は、「イスラエルは誰に仕えるのか？」ということです。それはつまり、出エジプト記を読むとき、私たちも「あなたは誰に仕えるのか？」と問われるということです。イスラエルはファラオに仕えさせられていました。それは死の力に抑圧され、それに隷属することを意味しました。しかしそれでは神の創造の目的は達成されません。
神は死の力に抑圧され、あるいは捕らわれた人々を見て立ち上がり、そこから救い出そうと動き出します。出エジプト記で描かれるのは、人々を死の力から救い出す神の働きです。それによって神は抑圧されていた人々を神の民とならせます。そのとき、人々は死の力に対抗し、神の目的に従って生きるようになります。
抑圧からの解放は、死の力を打ち破るとともに、奪われた人間性を取り戻すことも必要です。そのために神は出エジプトの過程で、イスラエルを神の民として整えていきます。神の民は、神の祝福を受け、ますます増え、ますます繁栄し、受け取った祝福を広めていくのです。
神は抑圧される人々の叫びを聞かれます。そこから救い出すために、神はどんなことでもなさいます。神は抑圧されている人々の神であり、困難の只中に入り込み、その状況を引き受けて苦しまれる方です。その中で神の目的を告げ、そこに向けて私たちを導き、必ず祝福を与えると約束してくださる方なのです。
牧師 杉山望
February, 6, 2022, Sunday Service
"Blessings Versus Disaster"
Scripture reading is taken from Exodus 1:8~14
Darkness arises in this world. God created all of creation to increase in number and be fruitful. However, darkness comes about in the world because it sees God’s blessings as a disaster and works to oppose it as the “power of death.” God resists the “power of death” for God’s purposes. God delivers the oppressed and restores their stolen humanity.
One Year Since the Coup D’état
A year has passed since the coup d’état in Myanmar that took place on February 1st last year. Myanmar's military junta attempted to seize power from the government led by Aung San Suu Kyi. However, many people refused to support the military coup and called for the Civil Disobedience Movement (CDM), leading to widespread protests throughout Myanmar. Medical professionals, teachers, civil servants, bankers, and others refused to work in protest of the coup, and many people poured into the city streets to protest.
But the military junta continued to take a rigid stance, and from the latter part of February, they intensified their oppression. Although citizens tried to barricade themselves in the streets to stop the junta from advancing, live ammunition was used to suppress the citizens, resulting in many deaths.
So far, the military junta has killed at least 1,500 people, more than 400,000 people have been internally displaced, and more than 30,000 people are believed to have fled to neighbouring countries. Although people have fled, they do not necessarily have safe shelters, with many hiding in the jungle to avoid being discovered by the junta. It is said that there are over 14.4 million people in need of humanitarian aid, but it is not possible to deliver it adequately.
The People’s Defense Force (PDF) was created to fight against the junta that uses brutal force and violence to oppress. Some of the youths have volunteered to undergo training to fight in the PDF. Yet, the junta calls those who resist "terrorists" and repeatedly conducts aerial bombings, along with the burning and destroying of houses in various parts of the country.
This modern military junta in Myanmar has its roots in the Burma Independence Army (BIA), which was created with the support of the Japanese military during the war. Because the BIA contributed to Myanmar’s independence, the military’s influence remained strong even after independence. Additionally, Japan continued to provide massive support to the military regime even after the war. Therefore, the darkness that is over Myanmar is also linked to the darkness of Japan. Let us listen to the word of God as we turn our eyes to the ongoing darkness.
God’s Purpose of Creation
The book of Exodus is a continuous narrative from Genesis. In Genesis, God made an important covenant with Abraham, the father of the Israelites. Examples of where God speaks of the promises are in Genesis 17, where it says:
“Then I will make my covenant between me and you and will greatly increase your numbers….As for me, this is my covenant with you: You will be the father of many nations…I will make you
very fruitful; I will make nations of you, and kings will come from you.”
(Genesis 17:2,4,6/New International Version (NIV))
God promised that the descendants of Abraham would increase in number and be very fruitful. This also points to the purpose for which God created the world. That is, God created the world with the purpose that creation would increase in number and be fruitful.
God chose Abraham and promised that his descendants would increase and be fruitful. But God did not intend to bless only the Israelites. Just as God said to Abraham that “You will be the father of many nations.” (Gen 17:4), God's purpose was that the blessings God gave to Abraham and the Israelites would be extended to all nations. The purpose of God's creation has always been to bless all of creation and to bless all people.
Exodus, which follows the book of Genesis with its promise of blessings, tells us that this very promise has begun to be fulfilled.
“...the Israelites were exceedingly fruitful; they multiplied greatly, increased in numbers and become so numerous that the land was filled with them.” (Exodus 1:7 / NIV)
When the Israelites first moved to Egypt, they were seventy people, but in Egypt, they grew in number. The message that the promise is being fulfilled here in Egypt is conveyed through a series of expressions of the increase in number in verse seven “...they multiplied greatly, increased in numbers and became so numerous that the land was filled with them.”
For readers like us in our present time, the blessings of ever-increasing numbers and ever-increasing fruitfulness may not necessarily be equated with population growth or economic growth. Rather, God's blessings or fruitfulness may be found in the liberation of those who have been suffering from oppression and poverty, or in the restoration of life and rest. The purpose of God's creation has not changed.
The Power of Death Against the Blessings of God
God's blessings were about to spread in the land of Egypt through the Israelites. But in the eyes of the new king of Egypt, Pharaoh, this was not a sign of blessing but was seen as a sign of disaster. Pharaoh wanted to prevent the Israelites from increasing in number and being more fruitful.
““Look,” he said to his people, “the Israelites have become far too numerous for us. Come, we must deal shrewdly with them or they will become even more numerous and, if war breaks out, will join our enemies, fight against us and leave the country.”” (Exodus 1:9-10/NIV)
What the Bible is trying to tell us through these events is not about ethnic or political conflicts. Instead, the Bible presents this as a conflict between the purpose of God and Pharaoh. If Pharaoh's purpose is achieved, then God's purpose, which has already begun to be fulfilled, will be thwarted. In this sense, Pharaoh is a symbol of the "power of death" that goes against the God of life.
Paulo Freire, a Brazilian educator, mentions as follows in his book " Pedagogy of the Oppressed":
"To the oppressor consciousness, the humanization of the "others" of the people, appears not as the pursuit of full humanity, but as subversion.”
Pharaoh must have had such consciousness or outlook. He did not see the fruitfulness of the Israelites as a blessing from God, but he feared it.
Thus, Pharaoh oppressed the Israelites and forced them to work extremely hard, in hope of weakening them and reducing their numbers. But that was not a wise idea. The more they were oppressed, the more the Israelites increased and expanded. This shows that God's will is not to give in to “the power of death” and the oppression of humans who are gripped by this power but to still bless no matter the circumstances.
God's blessings were at times given in the face of such adversity. At any age of time, there have always been people who have been seized by the "power of death", who have tried to interfere with God's blessings and take them away. Yet, God continues to fulfil God's promises despite the opposition of the "power of death".
God Who Rises and Raises People Up
Seized by the "power of death", the Pharaohs became increasingly aggressive in their opposition to the God of life. They tried to dehumanize the Israelites. At the same time, they dehumanized themselves. By opposing the God of life, they would also lose God’s blessings and become separated from the God of life.
Paulo Freire puts it as follows in his book “Pedagogy of the Oppressed”.
“Dehumanization, which marks not only those whose humanity has been stolen, but also (though in a different way) those who have stolen it, is a distortion of the vocation of becoming more fully human. This distortion occurs within history; but it is not an historical vocation.”
God's purpose was that creation as a whole, including all people, will be blessed. The pharaohs, who were now opposing God and oppressing the Israelites, were also included in that blessing. But they did not know it. Their purposes were in direct conflict with God's purposes. Stripping people of their humanity and depriving them of God's blessings comes from a distortion of humanity.
The book of Exodus tells us that when God's promise to bless all people began to be fulfilled, the "power of death" worked to interfere and oppose, as it dehumanized and oppressed the people. Furthermore, it reveals that God does not leave the "power of death" alone but will resist it. This is because the "power of death" seeks to thwart God's purpose and bring the meaning of creation to nothing. Along with that, God raises the Israelites, who had been continuously oppressed and dehumanized.
The key central question in the story is, "Who do the Israelites serve?" This means that when we read Exodus, we also are asked, "Who do you serve?". The Israelites were forced to serve Pharaoh, which meant that they were oppressed and enslaved by the "power of death". But this would not fulfil the purpose of God's creation.
When God sees people oppressed or held captive by the "power of death", God rises and moves to deliver them. What we see in Exodus is God's work of delivering people from the "power of death". By doing so, God turns the oppressed into God's people. The people would then be able to resist the "power of death" and live according to God's purpose.
Liberation from oppression requires not only defeating the “power of death”, but also restoring the humanity that has been taken away. To do this, God prepares the Israelites throughout the exodus. God's people will receive God's blessings, multiply greatly, become exceedingly fruitful, and spread the blessings they have received.
God hears the cries of the oppressed and will do whatever it takes to deliver them. God is the God of the oppressed; the One who comes into the midst of trouble takes on the situation and suffers through it. And amid it all, God is One who proclaims God’s purpose, leads us towards it, and promises to bless.
Pastor Nozomu Sugiyama
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