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傷つきを修復し、ニーズを満たすためのアプローチ

Anemone123によるPixabayからの画像

今月14日、ルワンダで平和と和解の働きに仕えておられる佐々木和之さんと、メノナイト平和宣教センター理事長の片野淳彦さんのオンライン対談が行われました。“メノナイト”はプロテスタントの一派で、非暴力・絶対平和主義の信念を保持し続けているという特徴があります。(対談は現在もYouTubeで視聴することができます。)

 

この対談は『修復的正義から、平和と和解を語り合う』というテーマで行われました。「修復的正義」ということはあまり聞きなれないことかもしれません。片野さんはそれを「人が何らかの理由で『傷つき』を経験した時に、その経験に関わりのある人たちのニーズを満たすことで、正義を実現しようとするアプローチ」だと説明します。一般的な正義のイメージは「勧善懲悪」のようなもので、法を侵害すると罪に定められ、罰を受ける、ということで実現されるものと考えられます。(そのような正義は「応報的正義」と呼ばれます。)一方、修復的正義では傷ついた人のニーズに目を向けます。罪が生じるとき、人あるいは人間関係が傷つきます。それを修復するために、傷ついた人のニーズが責任をもって果たされることが「正義」だと考えるわけです。加害者を罰することよりも、被害者や加害者、さらにはそれに関わった人のニーズを聞き、生じている害悪を解消し、損害を回復し、傷ついた関係を修復することが目的とされます。

 

修復的正義は応報的正義と対立するものではありません。加害者は自分のしたことに応じて責任を負う必要がありますし、罪に定めることで加害者の責任を明確にし、損害賠償のような被害者ニーズを満たすこともあります。それらの違いの一つは重点の違いです。応報的正義では応報の結果に焦点が当てられますが、修復的正義では応報のプロセスに焦点が当てられます。被害者のニーズを満たし、傷を修復するために、関係者の声を聞き、そこに至る経緯や加害者の感じていたこと、今考えていること、果たしていく責任などが問われます。このような正義は、神の正義とも重なって見えます。神は勧善懲悪で一方的に裁く方ではなく、正しい関係を修復するために、私たちと対話される方です。

 

牧師:杉山望