Herbert BieserによるPixabayからの画像
祝福して創られた人間
先週、津幡町にある石川県森林公園に行ってきました。少しだけ森の中を歩きましたが、植物も含めて色んな生き物の存在を感じました。普段の町の中での生活では忘れがちですが、自然の中に入ると、私たちが生きている地球にはたくさんの生き物がいることを思い出します。そこでは神様が創られた世界の多様性と、そこに生きる生き物が互いに関わり合って生きる豊かさを見ることができました。
創世記1章に記された天地創造物語の中心は、人間の創造です。この物語の後半で、人間は神に似せて創られた尊い存在であること、人間の創造を神様は喜び、祝福されたことが高らかに告げられています。
この物語が書かれたのは、イスラエルがバビロニア帝国に滅ぼされ、国の中心的な人たちが捕らえられていたときだと考えられています。イスラエルの人びとは、この世界はバビロニア帝国が支配し、世界の未来も帝国が支配しているかのように思えました。捕らわれの身となっている自分たちは、ちっぽけで、無価値な存在だと思えました。
そんな絶望的な状況の中で、イスラエルの人びとは神様に向き合い、この世界は誰が治めているのか、人間とは何者なのか、ということを問いなおしました。その中で神様に示され、語り継がれたのが、この天地創造物語です。
この世界は神様によって創られた。すべての人間も神様によって創られたのであり、バビロニアの支配者たちも神ではなく、被造物――神様によって創られたもの――に過ぎない。そしてこの私たちも、神様に似せて創られ、祝福された人間なのだ。
イスラエルの人たちは、絶望的な状況の中で、そのような神様からの語りかけを聞き取りました。そしてその語りかけは、私たちにも向けられています。神様こそが全ての生命の創り主であり、私たちも神様に祝福された大切な存在なのです。
祝福され、地に満ちる生き物たち
ただ、この創造物語では人間のことだけを語っているのではありません。物語の半分以上の25節までの部分で、人間以外のものの創造が語られています。それらのものは単に人間が利用する資源として創られたのではなく、それぞれを神様が良しとし、さらには祝福されたのでした。
天地創造物語は7日間の出来事として語られます。地は混沌としており、闇が覆っていました。混沌（カオス）は、神様に対立するもの、神様の想いに反する状態を表します。第一の日に、神様は「光あれ」と言われ、この混沌とした闇と光を分けられました。第二の日には大空を造り、第三の日には陸と海を分けられました。さらに神様は、大地に草を芽生えさせたので、種をもつ草や実をつける木が大地を覆いました。神様はこれらのものを見て、良しとされました。
続いて神様は、第四の日には太陽と月を作り、第五の日には水の中に群がる生き物と、天を舞う鳥を造られました。ここで神様は、それらのものを見て良しとするだけでなく、それらの生き物を祝福して言われました。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ」（1:22）。そして第六の日には、地の獣、それぞれの家畜、地を這うものを造られ、それを見て良しとされま、創造の仕上げとして人を創造し、祝福したのです。
神様は人間だけを祝福したのではありませんでした。人間も含めたこの世界の全体をよしとされ、その世界に増え広がっていく生き物たちを祝福したのです。神様にとって人間は特別な存在ですが、それでも神様はそれ以外の生き物や、この世界の姿にも関心をもっておられるのです。それらの生き物が生命をもち、地に満ちていることを見て「良し」と言っておられます。
この世界は偶然に造られたのではなく、神様の意志に基づいて造られました。神様はこの世界に生命が満ちるように、様々な条件を整えられました。それぞれの生き物たちが自由に生命を育むことを良しとされたのです。私たちの誕生を喜び、祝福してくださる神様は、この世界に満ちる生命をも良しとし、祝福しておられるのです。
人を生かす生態系
現在、地球上に存在する生き物のうち、人類が発見しているものは約800万種です。それだけでも途方もない数ですが、まだ見つかっていない種も多いと予想されており、全体では1000万種を超えると考えらえています。これだけでも途方もない数ですが、地球の歴史上に登場した生物の99％はすでに絶滅したと言われています。別の見方をすれば、それは10億種を超える生物がこの地球上に誕生してきたということです。
神様が創られた世界とは、それほどに多様で、それほどに豊かな世界です。神様が様々な生き物と造り、その存在を肯定し、「産めよ、増えよ、地に満ちよ」と言って祝福された、その世界の中に私たちは造られたのです。多様な生態系の中で、私たち人間も生かされている。それが神様の造られ、祝福された世界でした。
私たちは多くの生き物と、この地球の環境を分け合って生きてきました。多様な生態系が生み出す資源がなければ、人間だけで生きていくことはできません。例えば、植物がなければ酸素は枯渇してしまいます。私たちが生活の中で汚した水や土壌をきれいにしてくれるのは、目に見えないほど小さな生き物や植物です。食べる物も、着る物も、住まいを作る物も、エネルギーも、生き物に由来するものがほとんどです。
私たちは自然界とは区別された環境で生きているため、他の生き物との繋がりや生態系を意識することは、普段の生活ではあまりありません。また、人間は他の生き物とは区別された存在であり、世界を支配する能力をもっているという考えもあります。人間は「万物の霊長」――すなわち万物の中で最も優れたもの――と言うこともあります。
けれども、人間は人間だけで生きていくことはできません。現代においても、人間は他の様々な生き物の助けがなければ生きていくことはできないのです。それも家畜化された動物だけでなく、この地球上の多様な生態系が私たちの生命を支えています。
神様は私たちが生きるために、このような環境を造ってくださいました。ただしそれは、他の生き物たちが単に人間に利用され、資源と見なされるだけのものである、ということではありません。神様はすべての生き物を良しとされ、また祝福されたからです。
神様は人間を祝福して言われました。
「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」（1:28）
神様は「支配せよ」と言いましたが、それは人間が好き勝手に他の生き物や自然を利用することを意味していたのではありません。それは神様の造られた世界を守り、治めることです。人間に与えられた「支配する」という役割は、羊飼いの働きに重なります。羊飼いは羊から生活に必要なものをもらいますが、一方で羊を世話し、養うのです。
多様な関係の中で共存する
一方で、私たちは他の生き物や自然から良いものばかりを受け取っているわけではありません。ときには他の生き物や自然が私たちに牙をむき、害をもたらすこともあります。例えば近年、町中でもクマの出没が増えています。動物に襲われてけがをすることも起こります。大切に育ててきた作物が被害を受けることもあります。
生態系や自然環境が変わることで、天候の変化も起こります。日本も含めた世界各国で大規模な水害が増えていますし、広範囲にわたる山火事もたびたび起こっています。他の生き物からの感染症が広まって、大変な影響を受けることもあります。
この世界は、私たちにとって恵みだけをもたらすようなものにはなっていないのです。私たちはこの世界の上に造られたのではなく、この世界の中に造られたからです。すべての生き物が神様に良しとされ、祝福されている。それらが自由に関係しあって、共存しながら生命を育んでいる。生き物が多様であるだけでなく、そこに多様な関係があるからこそ、自然環境が私たちにも多くの恵みをもたらしてくれます。
私たちは恵みだけを受け取ることはできません。人類も生きるために自然に手を加え、利用していきてきました。それは人間が生きるために、ある程度は必要なことでした。けれどもどこかで、おいしいとこ取りをしようとしてきたのかもしれません。恵みだけを受けとって、都合の悪いものは全部外に押しやってしまおうとしてきたのかもしれません。
その結果、人類が把握している800万種の動植物のうち、100万種が絶滅の危機に瀕しています。毎日、およそ100種の生物が地球上から姿を消しているとも言われています。その多様性を失うことで、人類がこれまで受けてきた恵みを失ってしまうことが心配されています。
神様が造られた世界は、多様な生き物が満ちあふれる世界でした。そこではお互いが複雑に関係し合い、共存しながら豊かに生命を育む世界でした。そこには一方的に恵みだけを受け取るような関係はありませんでした。私たちも、一方的に恵みを受け取るだけではなく、その多様な関係の中に生きる存在だったのでしょう。
そしてそのことは、私たちと自然との関係だけのことではないのかもしれません。この世界では生き物が多様であるだけでなく、人間もまた多様です。誰かが一方的に恵みを受け、利用するような関係は、神様の造ろうとしたものではありません。多様な人々が、互いに複雑に関係し合いながら、共存していく世界こそ、神様の祝福された世界の姿なのです。
牧師：杉山望
June, 20th, 2021 Sunday Service
"We Are One of God’ｓ Diverse Creatures"
Scripture reading taken from Genesis 1:28-31
Humans Created with Blessings
Last week, I visited the Ishikawa Forest Park in Tsubata. I walked through the forest for a little while and felt the presence of various living things, including plants. We tend to forget this in our daily lives in towns and cities, but when we go into nature, we are reminded that there are many living things on Earth. I was able to see the diversity of the world that God created and the richness of God's creatures interacting with one another.
The center of the creation story in Genesis 1 is the creation of humans. In the latter half of the story, we are told that humans are precious beings created in the image of God, and that God was pleased and blessed with the creation of humans.
It is believed that this story was written after Israel was destroyed by the Babylonian Empire and the core people of the nation were being held captive. It seemed to the Israelites that the Babylonian Empire ruled this world and would continue ruling long into the future. They felt they were trivial and worthless in captivity.
In such a desperate situation, the Israelites turned to God and questioned who was in charge of this world and what humans were. In the midst of this process, God showed them the story of creation, which was passed down from generation to generation.
This world was created by God. All humans were also created by God, and the Babylonian rulers were not gods, but only creatures - things created by God. Come to think of it, we were also created in the image of God and blessed by God.
In their desperate situation, the Israelites heard such a message from God. And that message is directed to us as well. God is the creator of all life, and we are important beings blessed by God.
Blessed Are the Creatures That Fill the Earth
However, this creation story is not only about humans. More than half of the story, up to verse 25, talks about the creation of things apart from human. These were not created merely as resources for human use, but each of them was considered good by God and even blessed.
The story of creation is told as a seven-day event. The earth was in chaos and covered with darkness. Chaos is a state of being in opposition to God or against God's wishes. On the first day, God said, "Let there be light," and separated this chaos from the light. On the second day, He created the sky, and on the third day, He separated the land from the sea. In addition, God caused grass to sprout in the earth, so that the earth was covered with seed-bearing grass and fruit-bearing trees. When God saw these things, He was pleased.
Then on the fourth day, God made the sun and the moon, and on the fifth day, He made the creatures that inhabit in the water and the birds that fly in the sky. Here, God not only looked at them and said they were good, but also blessed them and said, "Be fruitful and increase in number and fill the water in the seas, and let the birds increase on the earth." (1:22). On the sixth day, He created the beasts of the earth, each domestic animal, and the creatures that creep on the earth. He looked upon them, saying that they were good, and then created humans as a final act with blessings.
God did not only bless humans. He saw the whole world, including humans, as good, and blessed the creatures that were growing and spreading in our world. Although humans are special to God, He is still interested in other creatures and the state of this world. When He sees that these creatures have life and are filling the earth, He says, "Good.”
This world was created based on God's will, not by chance. God created various conditions for the world to be filled with life. He allowed each living creature to freely develop life. God, who rejoices and blesses our birth, also rejoices and blesses the life that fills this world.
Ecosystems That Keep Us Alive
Of the living things that exist on the earth today, about 8 million species have been discovered. This alone is a tremendous number, but it is expected that there are many more species yet to be discovered, and the total number of species is thought to exceed 10 million. This alone is a staggering number, but 99% of the creatures that have appeared in the history of the earth are said to be extinct. From another perspective, that means that more than a billion species have been born on this planet.
The world that God created is so diverse and so rich. We were born in a world where God created various creatures, affirmed their existence, and blessed them by saying, "Be fruitful and increase in number; fill the earth." In the midst of diverse ecosystems, we humans also live. That was the world that God created and blessed.
We live by sharing the environment of the earth with many living creatures. Without the resources produced by diverse ecosystems, we could not survive on our own. For example, without plants, oxygen would be depleted. Invisibly small creatures and plants clean the water and soil that we pollute in our daily lives. The food we eat, the clothes we wear, the things we build our houses with, and the energy we use come from living things.
Because we live in an environment that is distinct from the natural world, we are rarely aware of our connections to other living things and ecosystems in our daily lives. There is also the idea that humans are distinct from other creatures and have the ability to rule the world. Some say that humans are the "spiritual head of all things" - the best of all things.
However, humans cannot live on their own. Even today, we cannot survive without the help of other creatures. Not only domesticated animals, but also the diverse ecosystems on this planet that support our lives.
God has created such an environment for us to live in. This does not mean, however, that other creatures are merely to be used by humans and considered as resources. God sees all creatures as good and blesses them.
God blessed humans and said, “Be fruitful and increase in number; fill the earth and subdue it. Rule over the fish in the sea and the birds in the sky and over every living creature that moves on the ground.” (1:28)
When God said, "Rule," it did not mean that humans should use other creatures and nature as they please. It means to protect and govern the world that God created. The role of "ruling" given to humans overlaps with the work of shepherds. Shepherds receive the necessities of life from their sheep, but they also care for and feed them.
Coexisting in Diverse Relationships
On the other hand, we do not always receive only good things from other creatures and nature. Sometimes, they turn on us and cause us harm. For example, in recent years, bears have been appearing more and more in towns. Animals can attack us and injure us. They may damage crops that have been carefully cultivated.
Ecosystems and the natural environment are changing, and so is the weather. Large-scale floods are on the rise in many countries around the world, including Japan, and widespread wildfires occur frequently. The spread of infectious diseases from other living things can also have a serious impact.
This world does not provide blessings only to us. We are not created to be superior to the creatures in this world, but as one of them. All creatures are good and blessed by God. They freely relate to one another and coexist in order to nurture life. The natural environment brings us many blessings, not only because of the diversity of living things, but also because of the diversity of relationships that exist there.
We cannot only receive blessings. Humans have also changed and used nature in order to survive. To some extent, it is necessary for humans to live. However, somewhere along the way, we have tried to take advantage of the best parts. We may have tried to take only the blessings and push all the inconvenient things out of our lives.
As a result, out of the 8 million species of plants and animals known to us, 1 million are in danger of extinction. It is said that about 100 species are disappearing from the earth every day. It is feared that by losing this diversity, we lose the blessings that we have received.
The world that God created was filled with diverse creatures. It was a world in which a variety of living things were coexisting, intricately related to one another, and nurturing life in abundance. There was no one-sided relationship of only a specific party receiving blessings. Humans lived in the midst of such diverse relationships, instead of just receiving blessings unilaterally.
This may not be just about the relationship between humans and nature. In this world, not only are there a wide variety of living things, but also a wide variety of humans. God did not intend to create a relationship in which someone unilaterally receives and uses the blessings of others. The world God intended to create is a world in which diverse people coexist in complex relationships with one another.
Pastor Nozomu Sugiyama
コメントをお書きください