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都合の悪いことも含めた恵み

DEZALBによるPixabayからの画像

先日、YouTubeで『基礎からわかる生物多様性』という講演を見ました。地球には人類にわかっているだけでも800万種の動植物がいると知って、その多様性の豊かさに驚かされます。生き物の多様性には、種の多様性だけでなく、遺伝子の多様性もあります。同じ種であっても、同じ遺伝子をもっているわけではない。そうすると、色んな危機(たとえばウィルスや細菌)に襲われたときにも、絶滅せずに生き残る可能性が高まるそうです。人間社会でも、多様な人が集まった組織、その多様性が生かされている集団の方が、いざというときには対応力があり、持続するのかもしれません。

 

自然が私たち人間にもたらす恵みも実に多様です。植物が光合成をして、私たちが生きるために不可欠な酸素を作りますし、動植物は豊かな土壌を作ってくれます。私たちの食糧や水、生活に使う木材や繊維、燃料、さらには医薬品のもとになるものまで、生態系の中から生み出されます。さらには、自然が私たちの心を癒したり、芸術を生みだしたりすることもあります。豊かな生活を支える物質や安全、私たちの健康は、多様な生物によって成り立っている生態系と無縁ではなく、むしろ密接に関わっているのです。私はこの話を聞いて、神様の恵みというのは既にこの世界にあったのだと気付かされました。

 

一方で、自然は私たちにとって都合のよいことばかりではありません。時には災害によって住まいを失ったり、命をおびやかされたりすることもあります。日本は地震も多く、近年、水害も増えていますので、自然の驚異を感じさせられます。また、生き物が農作物などに被害を出したり、毒などで直接的に健康を害することもあります。さらに、他の生き物から人間にウィルスがうつり、新たな感染症となることもあります。

 

講演の中で印象深かったのは、「自然との共存、共生という場合、人にとって、おいしいとこ取りはできない」ということでした。どの生き物も、「喰う・喰われる」という厳しい関係の中で、他の様々な生き物と共にこの地球上で生きています。私たちにとって都合の悪いことも含めたこの多様な生態系が、私たちに豊かな恵みを与えてくれるのです。