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危機は苦難の時であり、変革の時である
県内での新型コロナウイルス感染拡大を受けて、会堂に集まることを控える対応を始めてから４週目を迎えました。教会の活動にとっても、またそれぞれの信仰生活においても、大きな影響を及ぼしているこの状況に疲れを覚えます。
自分が疲れていると、より大きな重荷を負わされている人たちのことも忘れがちになってしまいます。例えば医療関係者はどれほどの重荷を負わされているでしょうか。愛知県医労連（医療介護福祉労働組合連合会）が行ったアンケートでは、回答した看護師の7割以上が「仕事を辞めたい」と思うときがあると答えています。また、昨年の冬のボーナスは前の年よりも減った人が72％、同じだった人が25％、増えた人は3％でした。
看護師はもともと人手不足でしたが、コロナ感染拡大による過労で退職者が増加しています。感染不安から新人の就職辞退も出ているようで、看護師不足はさらに深刻になっています。人手が足りず、残業が増え、夜勤回数も増えているようです。
もし、コロナ以前から看護師の労働環境が守られ、十分な人手が集まっていれば、コロナ危機下でも状況は随分と違ったことでしょう。けれども、利益を追求する新自由主義の下では、利益に繋がらないものはことごとく切り捨てられてきました。コロナ以前から余裕を奪われていたことが、今の時代をより深刻にしています。
コロナ危機は、社会の問題をあぶりだしました。私たちが生きる社会には抑圧や差別があったことを痛感させられます。自分が抑圧され、差別されていたことに気づかされたという人もおられるかもしれません。私たちが生きているのは公正さを失った世界、あるいは失い続けている世界でした。
一方で、今は大きな転換点であり、選択の時でもあります。ある人は、「危機とは単に苦難の時期であるだけではない。これは同時に政治的目覚めのときであり、社会変革の契機でもある」と言っています。危機が訪れる中で、隠されてきたことや、目を背けてきたことが露わにされるからこそ、これからどのように生きていくか、という選択が一人ひとりに迫られますし、人々の選択によって世界が変わっていく可能性もあるのです。
傷つき、暗くなっている人たちへの預言
イザヤ書の42章は、「第二イザヤ」と呼ばれる個所に含まれます。この預言がなされたのは、イスラエルが征服され、多くの人が捕らわれの身となっていたときでした。第二イザヤは、捕らわれの身だった人たちに、もうすぐそこから解放される、という預言を語りました。
ここでイザヤは当時のイスラエルの人々の様子を、「傷ついた葦」や「暗くなってゆく灯心」という比喩で語ります。イスラエルの人々は、生活が破壊され、自由を失い、多くの命が奪われたために、信仰も揺らぎ、自分たちが何者であり、何を拠り所にすればよいのか、ということもわからなくなっていました。
私たちの生きる世界と、イザヤの生きる世界とはあまりにも違いすぎます。けれども、人びとが傷つき、暗くなっていることは似ているかもしれません。イザヤの生きる世界も、公正さを失った世界でした。捕囚の期間を通して、イスラエルの人びとは自分たちが抱えていた問題に向き合わされました。そしてそこで神様の言葉が告げられたのです。
イザヤを通して語られた神様の言葉は、傷つき、暗くなっている人々への言葉です。それはただ慰めるだけの言葉ではなく、神様の想いと計画を伝え、これからの世界を、また私たち自身の生き方を考えさせ、神様の描く世界へと目を向けさせる言葉です。
主の僕――公正と調和のために働く人
ここで神様は一人の僕（しもべ）を紹介します。その僕とは、神様に仕える人、神様に特別に召し出された人のことです。その僕はある課題を担っており、その課題に立ち向かうための原動力として主の霊が授けられています。
この僕が誰なのか、ということについて、様々な可能性が考えられてきました。それはイザヤ自身であるという人もいますし、イスラエルのことだという人もいます。それはイエス様のことだと考える人もいます。確かにイエス様は、イザヤが紹介する僕のような方です。だからといって、主の僕はイエス様だけだと考えなくてもよいでしょう。イザヤが紹介しているのは、神様に仕える人――主の僕――とはどのような人か、ということです。それは神様を愛する人に向けて、こうなるようになりなさいという招きでもあります。
僕の使命は「国々の裁きを導き出す」（42：1）ことです。これは最近の翻訳では「諸国民に公正をもたらす」ことと訳されています。1節から4節までに3回、「公正」という言葉が繰り返されているので、主の僕の使命は「公正をもたらす」ことが中心になっていることがわかります。
公正（あるいは裁き）と訳された言葉は、ヘブライ語の“ミシュパート”（mishppat）という言葉です。神様が創られた世界全体が、このミシュパート（神様の公正）に支えられています。それが拒まれるとき、この世には悪がもたらされ、人と人との調和、あるいは人と被造物との調和が破壊されました。主の僕は、神様の公正が守られ、調和が回復されるために働くのです。
力に頼らず、声を聞く
しかし、主の僕のスタイルは、国々の支配者たちのスタイルとは全く異なるものでした。それは正反対といってもいいほどの違いです。
「彼は叫ばず、声を上げず、巷にその声を響かせない。
傷ついた葦を折らず、くすぶる灯心の火を消さず、忠実に公正をもたらす。
彼は衰えず、押し潰されず、ついには、地に公正を確立する。」（42：2～4／聖書協会共同訳）
大きな力をもった支配者たちは、大声で叫び、強大な影響力を発揮し、世界を思い通りに動かそうとするでしょう。けれども、主の僕は大声で叫ばず、声を町中に響かせません。大きな力で傷ついた人を押しつぶしたり、暗くなった心を踏みにじったりするようなことはありません。主の僕には、以前の預言者たちとも、支配者たちとも違ったスタイルが求められました。
主の僕は、自分に力があってもなくても、それを頼りにしません。一方で、抵抗にあったり、妨害されたりしたとしても、主の僕は衰えず、押しつぶされることもありません。この世に公正をもたらすまで、忍耐して主に仕え続けます。僕に力を与えるのは、主から送られる霊です。「わたしが選び、わたしの霊を置く」というほどに親密に語り掛ける神様が、僕を支えています。
主の僕はこの世で犠牲とされた人々――傷ついた人、暗くされた人――に目を向け、その声を聞きます。人々を抑圧し、差別する人間社会において、それに加担するのではなく、傍観するのでもなく、そこに目を向け、声を聞き、そこにこそ公正をもたらすために働きます。
主の僕は、神様の言葉と犠牲にされた人たちの声を聞きます。その両方から学んだことを語り伝えるのです。その教えは、島々が待ち望む教えです。島々とは、イスラエルだけでなく、世界全体を指す言葉ですから、主の僕は世界中が待ち望む神様の公正のために働くのです。
世の光となる
「神は天を創造して、これを広げ、地とそこに生ずるものを繰り広げ、その上に住む人々に息を与え、そこを歩く者に霊を与えられる。」（42：5）
神様はこの世界を創られた方であり、この世に生きる全ての命の創り主です。私たちは誰もが神様に創られ、神様によって命の息を与えられて、生きる者となりました。その神様はこの世に生きる人が誰であっても、「傷ついた葦」や「暗くなってゆく灯心」のようになることを良しとはしません。
人間社会には抑圧も差別もあります。しかし神様は、それでも仕方ないとはおっしゃいません。抑圧も差別もなく、違いをもった人間が互いに調和して生きること、さらには被造物とも調和して生きることをずっと望んでおられました。それは今までも、今も、これからも、変わることがありません。
神様のこの願いの実現のために、イスラエルはが神様の道具として選ばれました。
「主であるわたしは、恵みをもってあなたを呼び、あなたの手を取った。民の契約、諸国の光として、あなたを形づくり、あなたを立てた。」（42：6）
イスラエルの一人ひとりが主の僕となり、さらには共同体全体が主の僕となることで、この世の人々と神様が結びつき、世界の国々の光となることを期待していたのです。イスラエルはその期待に応えることができませんでした。それでも神様はイエス・キリストを遣わし、さらにはこの世に生きる人びとを主の僕として生きるように招き続けました。
神様の契約が広がり、国々に主の光が照らされるとき、神様の望む公正な世界が取り戻されていきます。そこでは傷ついた人が癒され、抑圧されていた人が解き放たれていきます。
「見ることのできない目を開き、捕らわれ人をその枷から、闇に住む人をその牢獄から救い出すために。」（42：7）
今、この世界にも、主の僕としての使命を担っている人たちを見出すことができるでしょう。私たちもその証を聞き、学びたいと思います。また、私たちも主の僕となるように、神様が招いてくださいます。私たちも公正さを失った世界に光を照らす者の一人となることができるのです。
そのためには、大きな力をもつことが必要なのではありません。神様の公正を求め続けることと、この世で犠牲にされた人たちに目を向け、その声を聞きくことが大切です。そこから学ばされたことを証しし、神様の指し示す公正な世界に向かって、私たちも忍耐しつつ歩み続けるのです。
牧師：杉山望
May, 30th, 2021 Sunday Service
"A Light to a World That Has Lost Justice"
Scripture reading taken from Isaiah 42:1-9
A Crisis Is a Time of Hardship and a Time of Change
It has been four weeks since we stopped gathering in church because of the spread of covid19 in the prefecture. I am tired of this situation, which is having a great impact on the activities of the church and on each of us in our lives as Christians.
When we are tired, we tend to forget about those who have a greater burden than we do. For example, how much stress do medical professionals have? In a survey conducted by the Aichi Federation of Medical Workers' Union, more than 70% of the nurses who responded to the questionnaire said that there are times when they feel like quitting their jobs. In addition, 72% of the respondents said that last winter's bonus was less than the previous year, 25% said it was the same, and only 3% said it was more.
Nurses have always been in short supply, but the number of those who quit is increasing due to overwork caused by covid19. The shortage of nurses is becoming even more serious, as some new recruits are turning down jobs due to anxiety over getting infected. Due to the shortage of nurses, overtime is increasing and the number of night shifts is also increasing.
If the working environment for nurses had been protected before covid19, and if there were enough medical workers, the situation would have been very different, even during the Corona crisis. However, under capitalism, everything that does not lead to profit is cut off. The fact that we have been deprived of our protections, even before the corona virus, has made the current era even more serious.
The Corona crisis has exposed the problems of our society. We are painfully aware of the oppression and discrimination that exist in society. Some people may have realized that they have been oppressed and discriminated against. We are living in a world that has lost, or continues to lose, its sense of justice.
On the other hand, we are at a major turning point, a time of choice. Someone once said, "A crisis is not only a time of hardship. It is also a time of political awakening and an opportunity for social change. In the midst of a crisis, things that have been hidden or rejected are exposed, and each of us is forced to make choices about how to live our lives in the future. The world can change, depending on our choices.
A Prophecy for Those Who Are Hurt and Depressed
Chapter 42 of the book of Isaiah is part of what is called "Second Isaiah.” This prophecy was made at a time when Israel had been conquered and many people were held in captivity. The second Isaiah told the captives that they would soon be released from their exile.
Here, Isaiah uses the metaphors of a "bruised reed" and a "smoldering wick" to describe the condition of Israel at that time. With their lives destroyed, their freedom lost, and so many lives taken, the Israelites' faith was shaken, and they were unsure of who they were and what they could rely on.
The world we live in is so different from the world Isaiah lived in. However, there are some similarities in that people are hurt and depressed. The world Isaiah lived in was also a world that had lost its justice. Throughout the captivity, the Israelites were forced to confront their problems. It was there that God's voice came to them.
God's words through Isaiah are words to people who are hurting and depressed. They are not just words of comfort, but words that convey God's thoughts and plans, that make us think about the future of the world and our own way of life, and that turn our eyes toward the world that God envisions.
The Lord's Servant - a Person Who Works for Justice and Harmony
In today's passage, God introduces a servant; a person who serves God, and who has been specially called by God. The servant is charged with a task and has been given the Spirit of the Lord as the driving force to face that task.
There have been many speculations as to who this servant might be. Some say it is Isaiah himself, others say it is Israel, while others think it is Jesus. It is true that Jesus is like the servant Isaiah introduces. However, that does not mean we have to think that Jesus was the only servant of the Lord. What Isaiah is referring to is the kind of person who serves God as the servant of the Lord. This is also an invitation to those who love God to become like this.
The servant's mission is to "bring justice to the nations" (42:1). Since the word "justice" is repeated three times in verses 1-4, we can see that the mission of the Lord's servant is centered on "bringing justice.”
The word translated as "justice" (or judgment) is the Hebrew word "mišpāṭ". The entire world that God created is supported by this "mišpāṭ" (God's justice). When it is rejected, evil is brought into the world, and the harmony between people, or between people and other creatures, is destroyed. The Lord's servants are to work for the preservation of God's justice and the restoration of harmony.
Listening to the Voice, Not Relying on Strength
However, the attitude of the Lord's servants was completely different from that of the rulers of the nations. It is so different that it could be called the exact opposite.
"He will not shout or cry out, or raise his voice in the streets.
A bruised reed he will not break, and a smoldering wick he will not snuff out.
In faithfulness he will bring forth justice; he will not falter or be discouraged
till he establishes justice on earth. (42:2-4 / New International Version)
Rulers with great power shout loudly, exert great influence, and try to move the world as they wish. But the servants of the Lord do not shout loudly and do not make their voices echo throughout the city. They will not use their great power to crush the hurt or trample the depressed. The Lord's servants are to have a different attitude than the prophets and rulers before them.
The Lord's servants do not rely on their own strength, whether they possess it or not. At the same time, the Lord's servants will not be diminished or crushed by resistance or obstruction. They will continue to serve the Lord with patience until God brings justice to this world. It is the spirit sent by the Lord that gives them strength. They are sustained by God who speaks to each of them so intimately, "my chosen one in whom I delight; I will put my Spirit on him".
The Lord's servants care about and listen to the victims of this world - the hurting and the depressed. In a society where oppression and discrimination against some people prevail, the servants are not complicit, nor do they passively observe. Rather, they turn their eyes to the victims, listen to their voices, and work to bring justice.
The servants of the Lord listen to the words of God and the voices of those who have been sacrificed, sharing what they have learned. This is the teaching that the lands are waiting for. The lands are not only Israel, but also the whole world. Thus, the Lord's servants are to work for God's justice, which the whole world is waiting for.
Be the Light of the World
"The Creator of the heavens, who stretches them out, who spreads out the earth with all that springs from it, who gives breath to its people, and life to those who walk on it" (42:5)
God is the creator of this world and the creator of all life on earth. We are all created and given life by God. God does not want anyone living in this world to become a "bruised reed " or a " smoldering wick."
In society, there is oppression and discrimination. However, God does not say that it is inevitable. He has always wanted people with differences to live in harmony with each other, as well as with other creatures, without oppression and discrimination. This has never changed, never changes, and will never change.
In order to realize this desire of God, Israel was chosen to be His instrument.
“I, the Lord, have called you with grace, and have taken your hand. I have formed you and set you up as a covenant of the people and as a light to the nations I, the Lord, have called you in righteousness.I will take hold of your hand. I will keep you and will make you to be a covenant for the people and a light for the Gentiles." (42:6)
God expected that each Israelite would become a servant of the Lord and then the entire community would become servants of the Lord, leading people to connect with God and become lights to the nations of the world. Israel failed to live up to His expectation. Nevertheless, God sent Jesus Christ and continued to invite the people of the world to live as His servants.
As God's covenant spreads and the Lord's light shines on the nations, the just world that God wants will be restored. In the restored world, the hurting will be healed, and the oppressed will be set free.
"To open eyes that are blind, to free captives from prison and to release from the dungeon those who sit in darkness. (42:7)
In this world today, we can find people who are on a mission as servants of the Lord. We would like to listen to their testimonies and learn from them. God also invites us to be His servants. We can be one of those who shine a light on a world that has lost its justice.
To do this, it is not necessary to have great power. It is important to continue seeking God's justice, to care about those who have been sacrificed in this world, and to listen to their voices. We must testify about what we have learned from them and continue down a path toward the just world that God has revealed to us.
Pastor Nozomu Sugiyama
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