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神の愛から離れないために
箴言は聖書の中で「知恵文学」というジャンルに分類されます。ここには古代イスラエルで受け継がれてきた知恵が集められています。私たちが人生の中で遭遇する様々な問題や困難にどのように応じればいいのか。この世の中でどのように生きれば、神様の祝福に与ることができるのか。そのようなことを伝えるのが箴言の知恵です。
知恵は様々な経験を通して蓄えられます。子どもたちの成長する姿を見ていると、色んなことを試して、経験し、学んでいく様子がはっきりと見えます。子どものときだけでなく、私たちは大人になってからも様々な経験を通して――時には成功から、時には失敗から――知恵を得ていきます。
箴言の知恵は一人の経験から得た知恵ではなく、共同体の中で見出され、語り伝えられてきた知恵です。初めは誰かの経験から得られた知恵でしたが、それを共同体の財産として受け継ぎ、語り伝えてきたのです。
箴言3章は、親が子どもに語る“諭し”という形で構成されています。古代イスラエルでは、知恵を伝えるのは主に親の役目とされていたことから、このような語り方が選ばれました。ただそこで語られる知恵は、民衆の間で語り継がれた格言とは異なります。
「わが子よ、わたしの教えを忘れるな。わたしの戒めを心に納めよ。
そうすれば、命の年月、生涯の日々は増し、平和が与えられるであろう。」（3章1～2節）
その知恵は人に命を与え、平和を与えるものです。そしてそこには神様の変わらない愛があります。
「慈しみとまことがあなたを離れないようにせよ。
それらを首に結び、心の中の板に書き記すがよい。」（3章3節）
「慈しみとまこと」とは、私たち人間に対する神様の愛を指す言葉です。神様の愛――慈しみとまこと――は決して変わることがありません。神様はいつもあなたを愛し、あなたのことをこの上なく大切な存在と思っておられます。一方、私たちは変わりやすく、神様の愛を忘れ、神様のもとを離れてしまいやすいものです。
神様が離れていくのではなく、私たちが神様から離れてしまう。だから、私たちが神様の慈しみとまことから離れないように、神様の教えと戒めを、心の中の板に書き記すのです。モーセが神様から十戒を授かった時に、十戒が石の板に刻まれていたように、私たちの心に神様の教えと戒めを刻むのです。そのことを見いだした知恵を刻むのです。そうすることで、私たちが神様の愛から離れずにいることができる、ということを、イスラエルの人々は見出したのです。
神様の想いを考え、主に信頼する
「心を尽くして主に信頼し、自分の分別には頼らず、常に主を覚えてあなたの道を歩け。そうすれば、主はあなたの道筋をまっすぐにしてくださる。」（3章5～6節）
この個所は、自分では何も考えず、全て神様任せにすることを勧めているわけではありません。訳す前のヘブライ語の意味を考えると、むしろしっかりと考えることが大事だと言われていることがわかります。
「心を尽くす」というところの「心」は、ヘブライ語では「レーブ」といいます。これは感情や感覚よりも、理性的な側面を強調する言葉です。ですから、心を尽くすというのは、頭を使って一生懸命考えて見る、ということです。
また、「自分の分別には頼るな」と言われているので、考えるということが自分の経験や知識だけで判断する、ということではないこともわかります。そうではなく、聖書を通して受け継がれてきた知恵や、主を信頼する人たちの姿を通して考える、ということです。それはテストの問題で正解を出そうとするようなもの、というよりは、神様の想いは何か、という人間には完全には知り得ないことを考え続ける、ということでしょう。
そのようなことを、常に行い続けることが大事です。私たちの歩む道は、いつも平坦な道ではありません。あるときは昇り坂、あるときはでこぼこ道で、なだらかな斜面のこともあれば、断崖絶壁で進めないこともあるかもしれません。それらのどのような道を歩くときにも――人生が順調なときも、逆境にあるときも――私たちは神様の想いを考え続けるのです。
「そうすれば主はあなたの道筋をまっすぐにしてくださる。」（3章6節）
まっすぐというのは、起伏のない、平らな道ということです。それは逆境が訪れない人生になるということではありませんが、その中にあって平安が与えられる、ということです。聖書に記された人々も、主に信頼しながら時に悩み、時に怖れることがありました。けれども、神様の想いに心を向けた人たちは、そこでパニックに陥らずに再び立ち上がり、歩みだすことができました。
そのことをイスラエルの人たちは、先人の経験から神様の想いを考え続け、主に信頼することで、平安が与えられることを知りました。詩編22編では、「信頼する」という言葉が４回も使われており、このように述べます。
「わたしたちの先祖はあなたに依り頼み、依り頼んで、救われて来た。
助けを求めてあなたに叫び、救い出され、あなたに依り頼んで、裏切られたことはない。」（詩編22編5～6節）
神様は、ご自身に信頼する人を見捨てておくことはありません。主に信頼したために、恥をかかされ、見捨てられた者はなかったのです。主に信頼し、神様の想いを考え続けることで、荒波の中でも揺るがない平安が与えられ、大胆なチャレンジをすることができました。
主への信頼に立ち帰るささげもの
「それぞれの収穫物の初物をささげ、豊かに持っている中からささげて主を敬え。
そうすれば、主はあなたの倉に穀物を満たし、絞り場に新しい酒を溢れさせてくださる。」（3章9～10節）
イスラエルの人々が神様に導かれたカナンの土地は肥沃な大地でした。古代社会において、豊富な収穫物は豊かさそのものでした。その豊かさは神様が与えた祝福でしたが、それを自分たちの力によるものと過信したことが、イスラエルにとっての躓きとなりました。
申命記には、豊かな生活に対する警告の言葉がありました。
「あなたは、『自分の力と手の働きで、この富を築いた』などと考えてはならない。むしろ、あなたの神、主を思い起こしなさい。富を築く力をあなたに与えたのは主であり、主が先祖に誓われた契約を果たして、今日のようにしてくださったのである。」（申命記8章17～18節）
収穫の初物をささげることは、それを与えてくださったのが主である、ということを覚える行為でもあったでしょう。何かをささげることで、神様からの見返りを期待していたわけではありません。自分たちが汗水流して得た富であっても、それは自分たちだけで得たものではなく、神様の祝福によるのだ、ということを思い起こし、主への信頼に立ち帰るためのものでもあったのです。
全ての道で主を知れ
しかし現代の人類は、そのことをもはや捨て去ったように見えます。キリスト教国と言われる国も例外ではなく、むしろそのような国こそ主への信頼を失っているのではないかと問われるべきかもしれません。
私は気候変動と環境破壊のことを学ぶようになって、これまでの世界観が根底から覆されています。便利さや快適さを求めることは良いことであると思っていましたが、そのために深刻な環境破壊を引き起こしていることを知ったからです。
例えば、今や私たちはプラスチック無しの生活はできません。どなたの家庭にもプラスチック製品は数えきれないほどあるでしょう。けれどもそのプラスチックは今や世界中の海を漂い、様々な生き物の命を奪っています。それだけでなく、ごく小さなマイクロプラスチックとなって、私たちの体に戻って来ています。一人当たり、年間5万個ものマイクルプラスチック粒を摂取している、とも言われており、そのことによる健康被害も少しずつわかってきました。
このような社会の形は、主への信頼に基づくものではなく、自分の分別を過信したためにもたらされたものでしょう。このような社会を作った人間は、神様が与えてくださった豊かさは何か、神様は私たちにどのように生きてほしいと願っているのか、ということを考え続けることを止めてしまったように見えます。そして、目先の利益ばかりを考えたこと、語り継がれてきた知恵を捨てたのです。
アメリカの先住民族の世界観を訴えてきたOren Lyonsさんという方がいます。彼はあるスピーチでこのようなことを言っていました。
「私たちの生き方では、物事を決めるときはいつも、七世代先の子ども達のことを心にとめている。これからやってくる人々、まだ生まれていない世代の人々が、私たちよりも悪い世界で暮らしたりすることのないように、できればもっと良い世界に生まれてこられるように心を配るのが、私たちの仕事なのだ。」
神様の祝福というものは、数世代で使い尽くしてしまうようなものではないはずです。なぜなら神様はどの世代に生きる人をも変わることなく愛しておられるからです。しかしこの世界は、目の前の人々や自然環境にさえ心を配ることができなくなっています。
聖書の中に納められた知恵は、私たちが本来、何者であるかを教えています。様々な困難を引き起こしてしまった私たち人間が、どのようにして方向転換していけばいいのか、神様の祝福を自分たちだけではなく、全ての人と、さらには世代をも超えて分かち合っていくためには、どのように生きればいいのか、その道が示されています。
そのことは、現代人が失ってきたものではないでしょうか。私たちが自分勝手な思いからではなく、常に主へと想いを考え続け、平安を与えられながら、神様の祝福を豊かに現わし、分かち合っていきたいと思います。そのために、どのような道を歩むときも、主を知ろうとすることを続けていきましょう。
牧師：杉山望
April, 25th 2021 Sunday Service
" Know the Lord in all your paths "
Scripture reading taken from Proverbs 3:1-12
To never be separated from God's love
The book of Proverbs is classified as a genre of "wisdom literature" in the Bible. It is a collection of wisdom passed down from generation to generation in ancient Israel. How should we respond to the various problems and difficulties we encounter in our lives? How should we live in this world to be blessed by God? The wisdom of Proverbs tells us these things.
Wisdom is collected through various experiences. When you watch children grow up, you can clearly see them experiencing, learning, and trying different things. Not only in childhood, but as adults, we continue to gain wisdom through various experiences - sometimes from success, sometimes from failure.
The wisdom of Proverbs is not only the wisdom of one person's experience, but the wisdom found and passed on in a community. It was initially gained from someone's experience, but it has been passed on as a heritage of the community.
Proverbs chapter 3 is structured in the form of a parent's waring to a child. In ancient Israel, it was mainly the parents who were expected to pass on wisdom, thus this way of writing was chosen. However, the wisdom here is different from the traditional proverbs passed down among the people.
“My son, do not forget my teaching, but keep my commands in your heart, for they will prolong your life any years and bring you prosperity.” (Proverbs 3:1-2)
This wisdom is meant to give life and prosperity. And that is where God’s unchanging love is revealed.
“Let love and faithfulness never leave you; bind them around your neck, write them on the tablet of your heart.” (Proverbs 3:3)
The words "love” and “faithfulness" refers to God's love for us human beings. God's love and faithfulness never changes. God always loves you and considers you to be the most important person in the world. On the other hand, we change easily, and it is easy for us to forget God's love and to leave God.
It is not that God is leaving us, but that we are leaving God. So, for us to not be separated from God's love and faithfulness, we are to write down God’s teachings and commandments on the tablet in our hearts. We are to inscribe God's teachings and commandments in our hearts, just as Moses did when he received from God the Ten Commandments, which were inscribed on a stone tablet. We are to engrave the wisdom that we have found in them. The Israelites discovered that by doing this, we can stay close to God's love.
Think about God’s desires/thoughts and trust in the Lord
“Trust in the Lord with all your heart and lean not on your own understanding; in all your ways acknowledge him and he will make your paths straight.” (Proverbs 3:5-6)
These verses are not suggesting that we should not think for ourselves and leave everything to God. If we consider the meaning of the original Hebrew text before the translation, we can see that it is rather important to think sufficiently.
The Hebrew word for "heart" in the phrase "with all your heart" is "leb”, which emphasizes the rational side rather than the emotional or sensory side. Therefore, “with all your heart” means to us one’s head and to think hard.
At the same time, we are also told to “lean not on your own understanding”. Thus, we know that thinking does not mean making decisions based on our own experience and knowledge alone. Rather, it means to think sufficiently with the wisdom that has been passed down through the Bible and through the lives of the people who have trusted in the Lord. It is not like trying to get the right answer to a test question, but rather to keep thinking about what God's desires/thoughts are, even if it is something that we humans can never fully know.
It is important to keep doing such things. The path we take is not always a smooth one. Sometimes it is uphill, sometimes it is bumpy, sometimes it is a gentle slope, and sometimes it is a staggering cliff that makes it impossible to go forward. As we walk along any of these roads - whether life is going well or in times of adversity - we must keep thinking about God's desires/thoughts.
“…and he will make your paths straight.” (Proverbs 3:6)
The word “straight” means a level path without ups and downs. It does not mean that our lives will be free from adversity, but it does mean that we will be given peace during it. The people in the Bible, who trusted in the Lord, were sometimes afraid and troubled at the same time. However, those who turned their hearts to God's desires/thoughts were able to get up and start walking again without panicking.
This is what the Israelites learned from the experience of their ancestors-- that by continuing to think about God's desires/thoughts and trusting in the Lord, they would be given peace. In Psalm 22, the word "trust" is used four times in verses 4 and 5.
“In you our fathers put their trust; they trusted and you delivered them. They cried to you and were saved; in you they trusted and were not disappointed.” (Psalm 22:4-5)
God does not leave those who trust in God behind. No one has ever been humiliated or abandoned because they trusted in the Lord. By trusting in the Lord and continuing to think about God's desires/thoughts, they were given an unshakable peace amid rough waters and were able to take bold challenges.
Offerings that bring us back to trust in the Lord
“Honor the Lord with your wealth, with the firstfruits of all your crops; then your barns will be filled to overflowing, and your vats will brim over with new wine.” (Proverbs 3:9-10)
The land of Canaan, where the Israelites were led by God, was a fertile land. In ancient societies, abundant harvests meant abundance itself. This abundance was a blessing from God, but the Israelites were overconfidence that the blessings had come from their own strength. This became a stumbling block for them.
In Deuteronomy, there are words of warning about living a life of abundance as follow.
“You may say to yourself, “My power and the strength of my hands have produced this wealth for me” But remember the Lord your God, for it is he who gives you the ability to produce wealth, and so confirms his covenant, which he swore to your forefathers, as it is today.” (Deuteronomy 8:17-18)
The offering of the firstfruits of the crop would have been an act of remembering that it was the Lord who gave it them. They were not expecting anything in return from God by their offerings. It was also a way for them to remember that the wealth they had earned through their sweat and toil was not earned by themselves alone, but that it was God’s blessings. Furthermore, it was a way to bring them back to trusting in the Lord.
Know the Lord in all your paths
However, humanity today seems to have abandoned this fact. Christian countries are no exception, and perhaps it is these countries that should be questioned if they have lost their trust in the Lord.
As I learn more about climate change and environmental destruction, my worldview has been radically overturned. I used to think that seeking convenience and comfort was a good thing, but now I know that it is causing serious environmental destruction.
For example, we can no longer live without plastic. There are probably countless plastic products in everyone's home. But the plastic is now floating in the world's oceans, killing all sorts of creatures. Not only that, but it is also returning to our bodies in the form of tiny microplastics. It is said that each of us ingests as many as 50,000 pieces of microplastics per year, and we are gradually learning about the health hazards caused by this.
Such a form of society is not based on trusting in the Lord, but it must have been brought on by the overconfidence of our “own understanding”. Humans that have created this kind of society seem to have stopped thinking about what exactly is the “wealth” that God has given us or how God desires us to live. It seems as by only thinking of immediate gain that all wisdom that has been passed down has been abandoned.
Oren Lyons, a Native American leader and environmental activist, mentioned something as follows in one of his speeches regarding the indigenous view of the world.
“In our way of life, whenever we make a decision, we always keep in mind the children of the next seven generations. It is our job to make sure that the people who are coming, the generations yet to be born, will not live in a worse world than we do, but will hopefully be born in a better one.”
God's blessings are not something that can be used up in a few generations, because God unchangingly loves the people in every generation. But in this world, we have lost the ability to care for the people and natural environment, both right in front of us.
The wisdom contained in the Bible teaches us who we really are. It shows us how we humans, who have caused so many difficulties, can change our direction and how we can live in such a way that shares God's blessings not only with ourselves, but also with everyone, even across generations.
Isn't this what we have lost in this modern society? Let us continue to keep our thoughts on the Lord, not out of selfishness. Let us abundantly reveal and share God’s blessings while dwelling in the peace given by God. For such purposes, let us continue to seek to know the Lord, no matter what paths we take.
Pastor Nozomu Sugiyama
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