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激しい違和感

Free-PhotosによるPixabayからの画像

先月、国連は2020年の世界の二酸化炭素排出量が前年比で7%減少するという推測を公表しました。新型コロナウイルスのパンデミックのために、経済活動などが減少したことが主な理由です。ただし、この程度の削減では、地球温暖化を抑える効果はほぼない、ということもあわせて報告されました。コロナのために世界的な関心が低下しているかもしれませんが、温暖化は確実に進んでいます。今回のウイルスとの関連はわかりませんが、環境破壊が続くと動物由来のウイルスによるパンデミックが頻発するようになる、という調査結果や、温暖化によってマラリアなどの熱帯性の感染症の範囲が広がることも想定されています。

 

二酸化炭素の排出量は、上位5か国(中国、アメリカ、インド、ロシア、日本)だけで、世界全体の約6割を占めています。しかし、温暖化によって引き起こされる危機は、世界全体に及んでいます。すでに世界各地で熱波や干ばつ、森林火災、サイクロンなどの自然災害が多発しています。雨の降るパターンも大きく変わり、降水量が増えるところもある一方で、内陸部では乾燥化が進むところもあります。故中村哲氏が活動しておられたアフガニスタンでも、山頂の氷河が急速に融解し、雪解け水に頼る生活が困難になっています。地球温暖化は、確実に人の生活の基盤を破壊します。それによって難民も増え、わずかな資源を奪い合う争いも増えていくことが予想されます。

 

国連では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求することが目標として示されました。“1.5℃目標”達成のためには、2030年までには二酸化炭素の排出量をほぼ半減させ、2050年までには純排出量をゼロにしなくてはなりません。しかも、温暖化は複数の要素が関連しあって進むため、“ティッピングポイント”と呼ばれる点を超えると、元に戻すことはできなくなるほど大規模な変化が生じると言われています。

 

そんな中で、排出量に特に大きく関わっているアメリカの億万長者647人の資産総額が、3月半ば以降で9600億ドル近く増加した、というニュースを目にしました。コロナ危機下で困窮する人が多くおられる中で格差が拡大し、二酸化炭素排出にほとんど責任のない人が真っ先に温暖化の被害を受ける。このような世界の在り方・社会構造そのものに、激しい違和感を覚えます。