二つの緊急事態
教会に集まることを休止して、それぞれの場所で礼拝を捧げるようになって４週間目となりました。色んなことが自粛され、様々な影響を及ぼしている中で、私たちは歩まされています。コロナの事ばかりが目につき、心を支配しそうになりますが、それだからこそ、私たちは立ち止まって、神様の前に静まり、感謝と応答の礼拝を捧げるということを大切にしたいと思います。
感染拡大とそれに伴う対応は、身体的にも、心理的にも、経済的にも影響を与えています。さらには間接的に、環境にも影響を及ぼしているようです。世界各国で外出自粛や経済活動の縮小が行われたために、空気がきれいになった、というのです。例えば、空気中の汚染物質が３５％も減った、とか。これまでにないほど長い間、澄んだ空気の日が続いた、とか。遠くの山々が数十年ぶりに見えた、といった目に見える変化が起きています。
変化は目に見えない部分でも起きています。温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量も、この期間に大きく減っています。例えば中国では、２月の排出量が１月よりも２５％も減ったそうです。おそらく、コロナの影響を受けた世界各国で、同じようなことが起こっているでしょう。
地球温暖化については、もはや疑う余地はありません。多くの科学者が証言をしていますし、私たちの生活の中でも明らかな変化を感じます。金沢では、この冬に雪が積もらなかったと聞いています。私が住んでいた札幌でも異常なほど雪が少ない冬となりました。気候変動は明らかに進んでいます。
最近では、地球温暖化のことが「気候危機」と呼ばれています。それは人類も含めた地球上に生きる多くの生物にとっての「危機」となります。ある予測では、気候変動が進んだ場合、２０３０年から２０５０年には、現在より年間で２５万人以上、死者が増えるとされています。２５万人というと、現在、コロナウイルスによって世界中で亡くなった人の合計よりも多い数です。その数もさらに深刻化することもありうると警告がなされています。
今、世界各国で新型コロナウイルスに対する「緊急事態宣言」がなされています。しかし、人類が直面している緊急事態には、地球温暖化という気候危機もあるのです。
被造物に仕え・守ること
しかし、この世界は私たち人間にとっていつも危機的状況であったわけではありません。それどころか、この世界は人間にとって素晴らしいものとして造られました。創世記では、地球を含めたこの世界が、神様によって造られたものであることを伝えています。この自然も、そこに生きる生き物も、神様が造り、神様に良しとされたものでした。
創世記２章から３章にかけて、「エデンの園」が舞台となります。“エデン”とは、「喜び」という意味だと言われています。神様は喜びの世界を造られた。神様に造られ、そこに生かされた生き物たちにとって、世界は生命に満ちた喜びの場であった、ということです。
神様に造られたものの中で、特別なものとして造られたのが人間でした。人間は神様との特別な関係をもち、神様から特別な働きを託されたのです。
「主なる神は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようされた。」（２：１５）
ここに書かれているように、特別な働きとは、「地を耕し守ること」でした。「耕す」と言う言葉は、もともと「仕える」という意味の言葉です。地とは地面のことはもちろん、世界の全てを指す言葉でもあります。つまり、人は神様によって造られた世界――その自然や生き物――に仕え、それを守ることを託されたのです。
特別な存在というと、力をもって支配することを想像するかもしれません。けれども、神様は人間が他の生き物の上に君臨することを望んでいたわけではありません。人間のために好き勝手に自然や生き物を乱用することを良しとしたのでもありません。人間は、この世界に仕え、この世界に生きる生き物たちを守るために造られたのです。それは、この世界をよいものであり続けさせる神様の働きに仕えることでもありました。
そのような意味で、人間は自然の上に立つ存在ではありません。むしろ、自然の中に、すべての生き物の中に立ち、それに仕え、守る者なのです。
生命を守るための命令
神様は、その働きと共に、重要なことをあと二つ、人間に命じていました。
「園のすべての木から取って食べなさい。ただし、善悪の知識の木からは、
決して食べてはならない。食べると死んでしまう。」（２：１６，１７）
人間は自由に生きることを良しとされました。命令に強制的に従わせようとしたのではありません。自分で考え、自ら応答することを願ったのです。ここで大事なのは、許されていることは「取って食べること」、つまり生命を守り、維持するために必要なことをしてよい、ということです。独占して利益をあげることや、乱用して破壊することを良しとしているのではありませんでした。
もう一つは、「善悪の知識の木から食べてはならない」という禁止命令でした。「善悪の知識の木」がどのようなものであるか、具体的なことは書かれていません。ここで示されているのは、人間には超えてはならない境界線がある、ということかもしれません。文明の発展と共に、人間にできることは増え続けてきました。これからさらに増えていくでしょう。けれども、その全てが良しとされているのではない。生命を守るために、行ってはならないこともあるのです。
人間が神様との正しい関係を保つためには、神様から命じられた３つのこと――他の生き物を守ること、生命を維持する自由、超えてはならない境界線を守ること――が必要でした。そしてそれは、神様に造られた世界の中で人間自身の生命を守るために必要なことでした。
背きのために失われる生命
ところが、人間は神様の命令に背きました。背いたのは最初に創られたアダムとエバの二人だけではなく、人類がその歴史の中で神さまの命令に繰り返し背いてきました。
アダムとエバは、禁じられた実を食べ、自分たちが裸であることを知りました。すると二人は神様から身を隠します。神様と向き合う関係が壊れてしまいました。さらに神様から何をしたかと問われると、男は女に、女は蛇に責任をなすり付けます。それまで二人は互いに向き合う良き助え手でしたが、その関係も壊れてしまいました。身を隠す二人は、生きるための自由も、園を守るという働きも失ってしまいました。
善悪の知識の実を食べると、「目が開け、神のように善悪を知るものとなる」と言って、蛇は二人を誘惑しました。それは人間が神様に造られたものであり、神様の守りの中で生きるものであることを止めることでした。神様の命令に従うのではなく、自分が支配者となりたいという欲求が、人間にはあるのかもしれません。
神様は、「その実を食べると死んでしまう」と警告していました。一方、蛇はそれを食べても決してしなないと言っていました。食べた結果、二人は死にませんでした。けれども、神様との関係、人との関係、自然との関係は、どれも壊れ、死んでしまったのです。それは人間の生命を脅かすことになります。
しかしそれは、人間だけの問題には留まりません。人間は特別な存在として造られました。それは人間の過ちが、人間だけでなく、すべての造られたものにも及ぶ、ということでもあるのです。命令に背く人間に、神様は「お前のゆえに、土は呪われるものとなった」（３：１７）と言いました。人間が、ではなく、土が呪われてしまったのです。私たち人間が、神様との正しい関係を失うならば、この世界が生命を失っていくことになるのです。
祝福と生命の世界へ
それでも、この物語は裁きでは終わりません。神様はそれでもなお、人間を見捨てはしないのです。園を守る命令を破った人間は、エデンの園から追放されます。人間は、神様によって造られた”良さ”を失った世界で、苦悩しながら生きざるを得ません。けれども、神様は罰として生命を奪うということをせず、むしろ二人が生き続けるように、配慮をしておられるのです。
神様は世界の造り主です。ただし、神様は造り主だったのではありません。今もなお造り主であり、壊れた世界を正しく戻そうと願い、働きかけておられます。人間が命令に背こうとも、繰り返し立ち帰るように呼びかけておられます。
人類社会は今、急激にこの世界を破壊しています。ある意味では、コロナウイルスよりも、人間の業のほうがはるかに人間にとって脅威となります。大きな力を求めた人類は、神様の命令に従うのではなく、自分たちだけで世界を支配しようと考えてしまいました。その結果、神様の備えてくださった世界を壊し、生命を脅かしています。
アダムとエバの二人を諦めなかった神様は、私たちのことも諦めることはありません。エデンの園の主が神様であったように、この世界お治めるのは私たち人間ではなく、神様です。人間は過ちを犯し、その責任と役目を忘れますが、神様は私たちを正しいところへと導こうとしておられます。そして人間も、また他の生き物も、豊かに生命を育むことができる世界を取り戻そうとしておられます。
そこにあるのは、神様の情熱です。御自身が造られた生命に固執し、決して諦めることなく、何としても生かそうとする神様の情熱が、今も私たちと世界を救おうとしています。
コロナ後の世界（アフターコロナ）について、色々な予測もなされています。私たちはその世界を、神様と共に造って行きたい。支配と滅びではなく、祝福と生命の世界に向かって歩む者へと変えられたいと願います。
（牧師・杉山望）
May 3rd,2020 Sunday Service
"To be a person that brings blessings to the world"
Scripture reading taken from Genesis 3:1~19
2 emergency situations
It has been 4 weeks since we stopped gathering at Church and instead worshipped God at our own place. We are living our lives under various influences and trying to constrain ourselves to our homes. Under the current circumstances, our mind is full of everything related to corona virus that it may reach a point where corona is all we could focus on, giving all the more reason to stop and quiet ourselves before God to offer praise and worship God with thanksgiving in our heart.
Along with the spreading of the infection, our body, mind and finance are receiving the effects of the virus. The environment is also indirectly affected by this virus. Due to the restraint movement as well as the low economic activity all around the world, the air is becoming cleaner. One example is that the pollution content in the air has decreased by about 35%. Another is that we are having days clear skies in succession and being able to see mountains that have not been visible for few ten years.
There are also changes in places that are not visible to our eyes. The main reason for global warming, which is the release of Carbon Dioxide, has also seen a great decrease in this period. For example, the emission of CO2 in China during February is 25% less than that of January. I am sure that similar happenings should occur all around the world as this corona virus is affecting the whole world.
There is no room for doubt that global warming is happening. Numerous scientists have declared such and we are also experiencing the effects of it. I heard that the snow in Kanazawa’s winter this year did not pile up. The place where I lived in, Sapporo, has also seen a huge decrease of snow this year. The change in climate is obviously happening.
Recently, global warming is called as “climate crisis”. It is a crisis that involves many of the living beings on earth including humans. According to a prediction, if climate change goes on, by 2030 to 2050, we will see an increase of 250 thousand more deaths than this year. It is 250 thousand more deaths than this year that is under the influence of corona virus. It has also been said that the increase in numbers might be worse that predicted.
Emergency declarations have been made in many countries as a counter to the new coronavirus. But this pandemic is not the only emergency that the world is facing, climate crisis is also another one such emergency.
Serving and protecting God’s creation
However, the world has not always been in a crisis. In fact, the world is actually made beautifully for humans. In Genesis, the world including earth is created by God. Nature along with everything living on it was created by God, and God deemed it good.
In Genesis chapter 2 ~ 3, the Garden of Eden was the main topic. “Eden” means Delight. God created a world of delight and for the living beings created by God, it was a world filled with delight.
Among all of God’s creation, humans were special. Humans had a special relationship with God and were entrusted with special work by God. Genesis 2:15 says, “The LORD God took the man and put him in the Garden of Eden to work it and take care of it.”.
The special work entrusted to humans was to work it and take care of it. The term “work it” means to tend to it, to cultivate it, to work for it. The earth means both the ground we stand on and the whole world. In conclusion, God entrusted the job of serving and protecting the world and the beings that lives in it to humans.
When speaking of special existence, we may often relate it to having power and ruling over others. However, God did not want humans to reign over other creatures. It is not good to abuse nature or other beings for the benefit of humans. Humans were created to serve this world and protect the creatures living in it, to serve God by keeping the world good.
In another meaning, humans are not being that stand above nature. Rather, standing among nature, serving and defending all living being.
The command to protect lives
Along with the special work, God gave 2 more important commands to humans. Genesis 2:16-17, “And the LORD God commanded the man, “You are free to eat from any tree in the garden; but you must not eat from the tree of the knowledge of good and evil, for when you eat from it you will certainly die.””
Humans were allowed to live as they will. They were not forced to obey the commands. God wanted them to think for themselves and take action. The important thing here is that taking and eating it is allowed. In other words, it is okay to do what is necessary in order to preserve lives. It is not okay to do it for the sake of ones benefit or to abuse and destroy it.
The other command was to not eat from the tree of the knowledge of good and evil. There is no concrete description of what the tree of knowledge of good and evil. What may be shown here is that humans have boundaries that must not be exceeded. With the development of civilization. The things that humans can do have increased and will increase even more from now on as well. However, not all of them are considered good. To protect lives, there are certain things we must not do.
In order for humans to maintain a proper relationship with God, it is necessary to do 3 things that God has commanded: to protect other creatures, the freedom do what we need to preserve life, and to not cross the boundaries given to us. These are necessary to protect our lives in the world created by God.
Life lost due to disobedience
Humans disobeyed God’s commands. It was not only Adam and Eve that disobeyed God, mankind has repeatedly turned against God in its history.
Adam and Eve ate the forbidden fruit and learned that they were naked, subsequently hiding themselves from God. Their relationship with God was broken. When they were questioned by God, the man blames the woman, and the woman blames the snake. Until then, those two were good partners supporting each other, but their relationship was broken as well. The two who hid themselves from God have lost their freedom to live as well as their work of protecting the garden.
The serpent tempted the them saying, “when you eat from it your eyes will be opened, and you will be like God, knowing good and evil.” The serpent did that to stop humans from living in the protection of God. The humans may have had a desire to become a ruler rather than obey God’s commands.
God warned them that if they eat that fruit, they will certainly die. But the snake said they would not die even if they ate that fruit. The result of dying from eating the fruit did not come to pass. But their relationship with God, relationship with fellow humans, and the relationship with nature were all destroyed resulting in the lives of humans being threatened.
However, this does not just stop at being just humans’ problem. Human were created as a special existence. The misdeeds caused by human affects not only humans, but all creation of God. God said to Adam who disobeyed God, “Cursed is the ground because of you.” It was not humans that was cursed, but the ground. If we no longer have a proper relationship with God, this world will lose its life.
A world filled with life and blessings
The story does not end with judgement. Even with what we and our ancestors have done, God does not abandon us. Humans who disobeyed the commandments to protect the Garden of Eden were exiled from it. Human have no choice but to live miserably in a world created by God that have lost its “goodness”. However, God did not take their lives as punishment, but rather continue to care for them to continue living.
God is the creator of this world. God is not just the creator in the past, but is still the present creator, and He is working to right this broken world. God repeatedly calls back humans to Him even if they turned against God.
The human society now is rapidly destroying this world. In a sense, human work is far more of a threat to humans than the coronavirus. Mankind is disobeying God and seeking power to rule the world by themselves. As a result, they are destroying the world God has prepare for them and threatening all the living beings on it.
God did not give up on Adam and Eve, he will also never give up on us. Just as the Lord of the Garden of Eden was God, it is God, not us humans, who governs this world. Humans make mistakes and forget their responsibilities, but God will continue to guide us to the right path. God is trying to help us regain a world where we and other creatures can nurture life in abundance.
This is where God’s passion lies. The passion of God who persists in his creation, to never give up on them and tries to save them. Even now, it is God’s passion that is trying to save us and the world.
There are various prediction about the world after the corona pandemic. We want to create that world with God. I want to be a person that does not rule over the world and cause destructions, but to be a person that strives for a world of blessings and life.
Pastor Nozomu Sugiyama
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